恋バナ

「……後悔はする。けど、私は星奈を応援する」


 波の音が大きくなる。

 いや、会話が途切れてそう聞こえるだけ。


「そうですか。由香里さんがそれでいいのなら、私は口を挟みません」


 優里さんが静かに立ち上がる。

 私も遅れて立ち上がる。


「でも1つだけ」


「ん?」


「星奈は良い人です。例えあなたが伊織さんを横取りしたとして友だちを辞めるような人では決してないですよ」


 優里さんが笑顔で言う。


 知ってるよ。星奈が良い人だってことなんて。

 酷いことしたのに、今ではこんなに仲良くしてくれて。優しすぎるよ。

 たぶん、私が伊織を取ることになっても私の前では笑ってくれる。恨み言なんて全然言わなくて。


 でも、いやだからこそ、そんな優しい星奈が報われてほしい。

 だから私は、全力で自分を騙し続ける。


「優里ー、由香里ー!バーベキューするよー!!」


 遠くから葵さんが私たちを呼ぶ。

 見ればみんながバーベキューの用意を始めていた。


「行こっか、優里さん」


「そうですね」



◆◇◆◇◆◇



「今日は楽しかった?」


 1日目が過ぎて萌香と隣り合わせてで横になる。


「はい、楽しかったです」


 海で遊んで星奈が連れてきた4人とだいぶ仲良くなれた気がする。


「いおりんカッコいいよね」


「ふぇっ?!」


 あはは、驚いてる。萌香はいおりんのことが好きなんだしそれもそうか。


「大丈夫、大丈夫。いおりんのこと取ろうなんて思ってないよ」


 いおりんは確かに絶世のイケメンだと思う。

 けど、ライブとかでいつも前の席にいたりして、もう見慣れてるんだよね。

 何かキュンとなるようなことがない限り好きにはならないかな。


「良かった……って私が先輩のこと好きなのバレてる?!」


 萌香が驚いてる。

 でも、私も驚いてる。


「あれで隠してたつもりなの?あんなの誰にでも分かるよ」


 ずっと、いおりんに構って構ってアピールがすごかったもん。


「ぅぐ……で、でも肝心な人にはバレてないんですよ」


「あー」


 そんな感じはしてたな。


「ずっと前からアピールしてるのに全然気づいてくれなくて……」


 萌香が悲しそうに言う。


「へぇ……ねえ、聞かせてよ。いおりんのどこが好きなのかとか、色々!」


「は、恥ずかしいですから嫌です!」


「えー、いいじゃん。乙女の夜は長いんだよ!」


「修学旅行ですか?!」


「あははっ、いいね!」


 そして、結局萌香が諦めたようにして恋バナは始まった。

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