お節介

 白い砂浜。照りつける太陽。波の音が鳴り響く。


「葵ちゃん、よろしくね」


「うん!まかせて!」


「もえちゃん、私がやる」


「うん、お願い」


 4人の女子の決闘が今始まる。


 葵・星奈チームVS花音・萌香チーム


「じゃあ、ビーチバレー開始」


 審判は俺がすることになった。


「いくよー!」


 葵さんのサーブだ。


 ボールが空中に綺麗な弧を描いて花音のコートへ。


「もえちゃん!」


 宣言通り花音がレシーブをする。

 上がったボールが落ちる先に萌香がスタンバイしていて、トスを上げる。


「花音!」


 花音が助走に入って跳ぶ。

 そして、落ちてくるボールを手に捉えて相手のコートに。


「きゃっ!」


 ボールは星奈ちゃんの隣に落ちる。


「花音チーム1点」


「やったー」


「ナイストスもえちゃん」


 うまいな、2人とも。まさか萌香が運動までできるとは。見かけによらず文武両道だ。


「ごめんね葵ちゃん」


「ううん!大丈夫!」


 星奈ちゃんは少し苦手そうかな?

 葵さんは、スポーツは何でもできそうってイメージがあるな。


「じゃあ、いきますね」


「いいよ!」


「うん」



◇◆◇◆◇◆



「優里さん、話って何?」


 星奈たちがビーチバレーを始めるタイミングで私は優里さんに呼ばれた。

 星奈たちから遠く離れた日陰に隣り合わせて座り込む。


「少し気になることがありまして。どうして隠しているのですか?」


「私が隠してる?何を?」


 考えてみるけど思い当たることがない。


「伊織さんへの好意ですよ」


 一瞬、呼吸が止まる。


「……別に私は伊織にそんな感情」


「いいのですか、隠したままで?後悔はしませんか?」


 優里さんが問いかけてくる。

 ……確信してる。誤魔化せないや。


「私は伊織の顔が好きになったんだ。そんな私が真面目に恋してる星奈の邪魔なんかできない」


 私のこの想いは間違っている。

 だって、伊織じゃなくてもいい。イケメンなら誰でもいい。


「それで良いのではないですか?それに、由香里さんが伊織さんの性格を全く見ていないようには見えません」


「……」


「何を恐れているのですか?」


 優里さんが核心を突く。


「……星奈と友だちでいられなくなるのが嫌だ。それに、星奈の恋が叶ってほしい」


 自分でもよくわからない。伊織を自分のものにしたいのに、星奈を応援している自分がいて。そんな矛盾を抱えている。


 本当は違うんだ。イケメンなら誰でもいいわけない。伊織がいい。


「このままで後悔はしないのですか?星奈が伊織さんを取りますよ?」


 伊織が星奈と付き合うところを頭に浮かべる。

 たぶん2人はずっと楽しそうにしてる。


 伊織の隣が私だったら?

 無理だ。たぶん伊織の隣にふさわしいのは私なんかじゃない。


「……後悔はする。けど、私は星奈を応援する」

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