自己紹介

「じゃあまずは自己紹介をしましょう」


 俺たちは冷房の効いたリビングに通され、席に誘導された。

 大きい机だな。

 俺の隣に由香里さん。そして、花音、萌香と並んでその向かい側に星奈ちゃんたちが座っている。


「はーい!私は早乙女葵です!気軽に葵って呼んでね!」


 葵さんが椅子から立ち上がって元気良く言う。


 葵さんが喋ると自然と場が明るくなるな。

 まさにアイドルって感じの子だな。


「私は七瀬優里です。私のことは優里でお願いします」


 優里さんはクールって感じだ。でも、きちんと表情は柔らかくて笑うと綺麗なんだよな。その笑顔に何人の男がやられてきたことか……。


「私は如月星奈です。よろしくね」


 星奈ちゃんが花音と萌香に向き合って言う。


「俺は神宮寺伊織です。呼び方は何でもいいよ」


「私は山本由香里。由香里って呼んで下さい」


 由香里さんが俺の後に淡々と自己紹介を終わらせる。

 そして、俺の隣に腰を下ろす。


「由香里さん、笑顔大事だよ」


 緊張しているのか少し表情が硬かったので、耳元に小声でアドバイスした。


「ひゃっ?!」


 すると、由香里さんが悲鳴を上げる。


「どうしたのですか?」


「い、いや何でもないよ!」


 由香里さんは顔を赤くして顔を下げる。

 一方、机の下では俺の足が由香里さんの足に襲われていた。

 痛いよ。俺が何をしたって言うんだよ。


「次は私だね。私は神宮寺花音です。よろしくお願いします」


 花音はいつも通りだな。

 さっきまで星奈ちゃんたちの姿に動揺してたのに。その適応力は誰に似たんだろうか。


 それにしても、最後に萌香を残すとは……。

 頼むから余計なことは言わないでくれよ。いつもみたいに俺をいじったりとか。今日は星奈ちゃんいるからタブーなんだよ。


「わ、私は桜木萌香ですっ。よろしくお願いしますっ!」


 おぉ、普通だったな。

 少し噛んでいたから緊張しているのか。


 自己紹介は何事もなく終わったな。


「桜木?」


 誰かが呟く。


「は、はいっ?!」


 萌香が声を裏返しながら返事をする。


 呟いたんじゃない。今の声は星奈ちゃんのものだ。そして、星奈ちゃんの顔は俺の方を見ている。


「……ドンマイ、伊織」


 由香里さんの控えめな声が耳に届く。

 何がドンマイなの?!助けてよ!


「あ、驚かせてごめんね萌香ちゃん。ただ気になることがあるだけだから気にしないで」


 聞きたいことがあるのは俺だけだと星奈ちゃんの顔が言っている。


 お、俺何かした?

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