集結

「たぶんここだよね?」


 波の音だけが聞こえる静かなビーチ。

 その奥にひっそりと別荘みたいなのがあった。

 2階建ての木造建築だ。


「……たぶんね」


 由香里さんが不安げに答える。


「私たちの家より大きいんじゃない?」


 花音が呟く。


「マンションの一室と比べるなよ」


 ガチャ


 突然ドアが開く。


「あ、おはよう!」


 出てきたのは星奈ちゃんだった。


「いらしゃーい!!」


 その後に続いて出てくる桃髪ツインテールの葵ちゃん。


「おはようございます」


 最後に黒髪ショートカットの優里ちゃん。


 【シューティングスター】が集結してる。ヤバい、少し緊張してきた。


「うわぁ、元トップアイドルが……」


 由香里さんも感極まっている様子だ。


「ちょ、ちょっとバカ兄?!」


 ぐいっと腕を後ろから引かれる。

 相手は花音だ。


「何だよ」


「い、色々と説明してよ!どうして【シューティングスター】がここにいるのかとかここはどこなのかとか!見ろ、もえちゃんを。思考止まってるから!」


 怒涛の勢いで詰め寄る花音に思わず退いてしまう。

 萌香の方を横目に見ると固まっていた。


「えっと、星奈ちゃんに誘われて、ここは葵ちゃ……葵さんのプライベートビーチらしいです」


 花音の剣圧が怖いから自然と敬語になっていた。


「で、どういう経緯で星奈ちゃんと友達になったわけ?」


「星奈ちゃんが転入してきたのです」


 少し日本語もおかしくなる。


「……何もかも話してないじゃん」


「ごめんなさい」


 ぐうの音も出ない。

 俺は頭を下げる。


「……いいよ。バカ兄はそんな奴だもんね昔から。今回は流石にびっくりしたけど。というか、推しがいるのに緊張しないわけ?」


 機嫌を良くした花音が聞いてくる。


「少しだけ緊張するよ」


「すこしだけって、心臓どうなってんの……」


 何故か呆れられた。


「萌香もごめんな」


 未だ放心状態の萌香に頭を下げる。


「お願い1個何でも聞いて下さい」


 萌香が俯いて言う。

 何でもか……。まあ俺が悪いしな。


「いいよ」


「ありがとうごさいますっ!お願いはいつか言いますっ」


 瞬時に機嫌が元通りになる萌香。

 ……取り消したくなるな。


「仲直りはできましたか?それじゃあひとまず部屋に入りましょう」


 優里さんがタイミングを見てそう言う。


「すみません待たせちゃって」


 優里さんや葵さんに頭を下げる。


「気にしないで下さい。それと私たちに敬語は不要です。同い年ですよね?」


「そうだよ!私たちはもう普通のJKなんだよ!」


 葵さんが元気良く言う。


「そうだね。分かったよ、敬語は止める」


「ええ。じゃあ中に入りましょうか」


 そうして、俺たちは葵さんの別荘へと足を踏み入れた。

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