作戦

「ただいまー」


「せんぱ〜い。おかえりなさーい。可愛い後輩のお出迎えですっ」


 ……果たして萌香を誘うべきなのか?いや、誘わなかったら後で面倒くさいことになる。


「萌香、夏休み海に行かないか?」


「え?それって私とデートしたいってことですかっ?そうですよねっ!」 


 いや違うからな。


「デートじゃ……」


「かのんー!!」


 あ、行っちゃったし。


『はあ?バカ兄にデートに誘われた?』


『うん!』


 扉越しに2人の会話が聞こえる。


『たぶんそれもえちゃんの勘違いだよ』


 流石花音、よく分かってるじゃないか。


「花音の言う通りだよ。友達に誘われたんだけど萌香や花音も一緒にって誘われたんだよ」


「…………ばかっ!」


 萌香が俺の横をすり抜けて玄関に走る。


「おーい、海は行くのかー?」


「行きますよっ!お邪魔しましたッ!!」


 萌香は怒鳴りながら答え出て行った。


「それで花音は行く?」


「うーん、行く」


「オッケー」



◇◆◇◆◇◆



 伊織くんと由香里ちゃんを海に誘った夜。私は葵ちゃんに電話をかけた。


「葵ちゃん、伊織くんの他に少なくても後3人来ることになるけど大丈夫?」


『全然いいよ!』


「ありがとう!」


『それより私ね、好きな人を悩殺する方法思いついだんだ!』


 葵が嬉しそうに言う。


「え?気になる」


『水着で攻めるんだよ!』


「水着?」


『そう!説明は難しい!とりあえず星奈の水着は私が買っとくから任せといて!』


 葵の自信満々の声が耳に入る。

 頼もしい!


「ありがとう!」


『じゃあまたねー!』


「うん、おやすみ葵ちゃん」


 葵ちゃん、どんな水着を持ってきてくれるんだろうか。

 楽しみだなあ。



◆◇◆◇◆◇



 もえちゃんがドタバタと帰ったその日の夜。


『花音、私はやるよ』


 電話越しにもえちゃんの声が耳を撫でる。

 もう寝ようとしたら電話かかってきたんだけど、何の話をしてるんだろう?


「そう。頑張ってね」


『……反応薄くない?!何をするのか気にならないの?』


 うるさいな。耳がキーンってなった。


「眠い」


『ご、ごめん……』


 少しトーンが小さくなる。


「それで何をするの?」


 どうせ聞かないと終わらないだろうから聞くことにした。


『際どい水着で先輩を……』


「止めろ」


 そこまで堕ちた親友なんか見たくない。それに、仮に成功したとして親友の色仕掛けで落ちるバカ兄も見たくない。


『もう買ってるもんねー』


 お願いだから昔のもえちゃんに戻って欲しい。


「それ着てきたらどうなるか分かってるよね?」


『うん。先輩が私にメロメロになるんだよね?』


「違うわ」


 バカなの?違うよね。頭良いよね?


『とりあえずそういうことだからじゃあねー』


「あ、ちょ……切れたし」


 どうにかして親友の暴走止めなきゃ。

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