夏休み

 1学期も終わりが近づいてきて、もうすぐで夏休み。外は暑苦しく蝉の声がうるさい。

 クラスでの主な話題は夏休み何するか、など夏休みの計画を立てている。


「伊織くん、由香里ちゃん夏休み海に行かない?」


 それは俺たちも例外ではなかった。


「海か、いいね」


「そんなに行ったことないな。俺も行きたい」


「一泊二日で泊りがけしたいなって思ってるんだけどどう?」


 おお!友達と旅行なんて学生っぽいな。初めてだ。


「あ、でも妹がいるから……」


 中3だから大丈夫だとは思うけど、少し不安だな。


「それなら妹さんたちも一緒にどうかな?」


 ん?妹さんたち?

 ああ、花音と萌香のことか。


「ありがとう!誘ってみるよ」


「私は普通に行けるよ」


「やったあ!」


 星奈ちゃんが無邪気に喜ぶ。

 その様子を見る俺と由香里さんも自然と笑顔になる。


「ていうか星奈大丈夫なの?目立つんじゃない?」


 そうか。元トップアイドルがビーチにいたらナンパとか……


「大丈夫だよ。プライベートビーチだから。別荘もあるよ」


「「え?」」


 この単語を生で聞く時が来るとは。


「私のじゃないよ」


「あ、葵ちゃんか!」


「正解!」


 俺と星奈ちゃんが盛り上がる中、由香里さんだけついてこれてないみたいだった。


「葵ちゃんって、早乙女さおとめあおい?!」


 数秒遅れて由香里さんが気づいたようで、驚いてる。


 早乙女葵とは、【シューティングスター】のメンバーの一人。

 桃色の髪のツインテールがチャームポイントの少女。

 元気が良く明るく、ファンの皆を元気にさせる子だった。


 そんな葵ちゃんは実は実家がお金持ちらしく、別荘をいくつか持っているとか。

 そんなことを何かの番組で言っていた。


「じゃ、じゃあもしかして七瀬ななせ優里ゆりも来たり……」


 七瀬優里ちゃんも【シューティングスター】のメンバーの一人で、黒髪ショートカットのクールな女性。


「うん、来るよ」


「【シューティングスター】集結じゃん……」


 流石の由香里さんも元トップアイドルが全員集結に気が滅入っている様子。


「どうして伊織はそんなに通常運転なの……」


 由香里さんが不思議そうに俺に尋ねる。


「いや驚いたけど、葵ちゃん来るなら優里ちゃんも来るかなって」


「好きなんじゃないの?」


「好きだよ。葵ちゃんと優里ちゃんも。ファンとしてだけど。

 でも、プライベートで会ったらアイドルじゃなくなるから」


「えぇ……」


 少し引いたような由香里さん。


「ふふ、伊織くんらしいね」


 微笑む星奈ちゃん。


 俺の答えに真逆の反応をする2人。


「普通だとは思うんだけどなぁ」

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