借り物競争
『お題を取った選手だが、全員その場で立ち止まっている!さあ、勝利は一体誰の手に?!』
よし、行くか。
『おっと、神宮寺くんが動き出した?!その向かう場所は……2年4組の応援席だぁ!』
いた。
「伊織くん?」
星奈ちゃんが首を傾げる。
「……ご、ごめんね!」
俺は星奈ちゃんを持ち上げて、抱えた。お姫様抱っこで。
「え、え?ちょっと?」
星奈ちゃんは突然のことで戸惑っている様子。
「ほ、本当にごめん!」
『神宮寺くん、同じクラスの如月さんをお姫様抱っこする!そのままレーンに戻り走り出す!!観客席からは悲鳴に似た叫び声が轟く!!』
絶対に後で殺される。
でも、何で女子も叫んでるの?星奈ちゃんって女子にも人気あるのかな?
「はあ、何のお題だったのよ伊織」
『独走!独走だ!!観客の怨念を背中に受けて神宮寺くん走り抜ける!!』
実況!それ言わないで!!
「い、いおりくん……」
「ご、ごめんね本当に」
心臓の音、星奈ちゃんに聞こえてないよね?
『ここで神宮寺くんがゴールテープを切った!!他の選手と圧倒的な大差をつけてゴールしたのは神宮寺くんだ!!』
ゴールした俺の方に補助員の生徒がやってくる。
「お題見せて下さーい」
「……はい」
恥ずかしい……。
「どうぞ」
補助員の生徒は渡したお題を見るとどこか戸惑ったように俺にお題を返した。
「ね、ねぇ」
「は、はいっ」
星奈ちゃんに声を掛けられてビクッとしてしまう。
「お題って何だったの?」
え?い、言うのか?いや、無理だよ。
「い、言えない……」
だって俺のお題は……
【気になる人(お姫様抱っこで)】
顔が熱くなる。
「むぅ」
頬を膨らませて拗ねる星奈ちゃん。
「いつか話すよ。とりあえず下ろすね?」
「う、うん」
星奈ちゃんを地面に立たせる。
「じゃ戻ろうか」
借り物競争は制限時間が10分。
もう終わりかな?結局ゴールしたの俺だけか。
「ぁ……」
後ろからか細い声が聞こえた。
「星奈ちゃん?」
あれ?何か顔が赤くて、ふらふらしてる……
「っ!!」
星奈ちゃんの足がもつれて、倒れ込む。
でも、ぎりぎり間に合って俺の腕に収まる。
「大丈夫?!」
星奈ちゃんの額に手を当てる。
熱っ!
熱中症かも!
「2度もごめんね!」
再び星奈ちゃんをお姫様抱っこして走った。
保健室へ。
また悲鳴が轟くけどもうどうにでもなれ。
それより花音や萌香が来てなくてよかったな。
今年の体育祭は平日だから、2人とも学校行ってるんだ。
2人に見られてたら後でいじられてた。
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