体育祭

「はぁ……」


「まあまあ、そんなにため息吐かなくても」


「だってさぁ」


 体育祭当日。始まる前から精神的に病んでいた。


「借り物競争とブロック対抗リレーだっけ?」


 横にいる由香里さんが少し口角を上げて言う。

 聞かなくても知ってるくせに。


 借り物競争は各クラスから男女一人ずつ。俺のクラスはじゃんけんで決めたんだけど、まさか負けてしまうとは……。


 ブロック対抗リレーは、クラスで3ブロックに分かれるんだけど、そのブロックの代表4名がリレーをするやつ。

 何か俺になってた。


「頑張ってね伊織くん!」


 星奈ちゃんが俺の両手を包み込む。


 今日の星奈ちゃんはやる気が入ってるな。

 頭にもはちまきを巻いてるし。


「……だからこういうのは2人きりの時にやって」


「「あ……」」


 互いにばっと背を向ける。


 顔が熱い。きっと気温のせいだね。うん。


「見てるこっちも恥ずかしくなるよ」



◆◇◆◇◆◇



『さあ、今年もやって来ました!花宮高校名物、借り物競争!!今年はどんなお題が来るのか?!それでは第1組』


 あぁ、来てしまった。

 横のレーンを見れば俺と同じように暗い表情をした同志がいる。

 そんな選手とは裏腹に大きな盛り上がりを見せる観客。保護者もいるから、かなりの騒音だ。


「いちについてー」


 5人がレーンにつく。

 皆心は一つ。


(どうか簡単なお題であってくれ!)


 パァン


 スタートを合図するピストルが鳴る。


 レーンに沿って走っていると自分のレーンに一つの箱があった。


 あれか。


『1番最初に辿り着いたのは2年4組の神宮寺伊織くん!そして後ろの4人もほぼ同じタイミングに箱に辿り着く!さて、彼らは何を引き当てるのか?!』


 一瞬躊躇するけど覚悟を決めて腕を突っ込む。


 簡単なやつ簡単なやつ簡単なやつ簡単なやつ……


 紙切れを一枚取り出す。


【―――――――】


「嘘だろ……?」

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