修羅場?

「……おはよう、伊織くん」


「おはよう星奈ちゃん」


 教室に着いてから数分後に星奈ちゃんがやって来た。

 でも、今日の星奈ちゃんは少し様子が変だった。どこか不機嫌な感じがする。


「……朝腕組んでいた女の子は誰?」


「あー、見てたんだ」


 萌香のことか。


「もしかして、彼女?」


 星奈ちゃんの涙声が耳に入る。

 あ!そ、そうだった!星奈ちゃんは俺のこと……


「い、いや違うよ!だよ。何か一緒に行こうってなってさ、それでいたずらでされてたんだよ!」


「あ……だったんだ。良かったぁ」


 星奈ちゃんがほっと胸を撫で下ろす。


「不安にさせてごめんね」


「……伊織くんに彼女ができたと思ったよ」


「そんな簡単にできるものじゃないでしょ」


 イケメンならできそうだけど、普通は友達から始めるものでしょ?彼女いたことないから分からないけど。


「……絶対できるよ伊織くんなら(ボソ)」


「そういえばもう少しで体育祭の時期なんだよね」


 去年もこの時期くらいから練習とか始めてた。


「そうなんだ。どんなことするの?」


 去年いなかった星奈ちゃんは当然分からないよね。


「えっと、有名なやつは借り物競争かな?なんか結構キツいお題がきつくて」


「体育祭初めてだから楽しみだな」


 星奈ちゃんが目を輝かせる。

 ああ、星奈ちゃんは仕事でこういう行事には参加できなかったのだろう。


「おはよう。何の話してたの?」


 由香里さんがこちらに来る。


「おはよう由香里さん」


「おはよう。体育祭がもうすぐなんだよね?」


「ああ、そうだね。それと終わった後に後夜祭もあったよね」


 由香里さんが俺に確認を取る。


「……そうだったね」


 去年参加してないこともあり忘れていた。

 後夜祭は自由参だったから。


「後夜祭って何するの?」


「何するんだ?」


「伊織、去年参加してないの?」


「だって、参加してるのイケイケ系の人ばかりだったから。それに、ボッチで参加しても面白くないよね」


「……何かごめん」


 今まで明るかったのに何か暗くなる空気。

 そんなに申し訳なさそうにしないで2人とも。


「じゃあ今年は参加できるね!私たちがいるから」


「ありがとう」


 イケイケでは無いけどボッチは解決できる。

 いける。


「後夜祭ってキャンプファイヤーするんだけど。そのキャンプファイヤーを好……あ、やっぱり何でもない」


 途中で誤魔化すように止める由香里さん。


「そこまで言われたら気になるよ」


「いや、勘違いだった」


「あ、そうなんだ」


「キャンプファイヤー……楽しみだね、2人とも!」


 星奈ちゃんの表情から本当に楽しみにしていることが伝わってくる。

 俺も楽しみだけどね。


「あー、私は用事があるから後夜祭は無理なんだ。だから2人で楽しんで」


 由香里さん行けないのか……


「……由香里ちゃん」


 星奈ちゃんが哀しそうな表情をする。気持ちはわかる。


「由香里さんと一緒にキャンプファイヤー見たかったな」


「ば、バカッそんな正面から言うなって!」


 え?

 由香里さんが背中を見せる。後ろから覗く耳は赤くなっている。

 俺いけないこと言った?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る