怒り
「あ、私今日委員会だった!ごめんもえちゃん、バカ兄と食べてて!」
いつもの中庭のベンチでお弁当を広げていると花音が走り去って行った。
花音のお兄さんと昼休みや登下校を一緒にしだしてから1週間。いじめは無くなったから効果は確実に出ていた。
「あー、えっと2人きりっていうのは始めてだね、桜木さん」
少し間を開けて座るお兄さんが話しかけてくる。
緊張してるのかな?
「そ、そうですね」
「……」
「……」
返し方間違えた。会話が無くなった。
どうしようどうしよう……
「お、お兄さんは3年生ですよね?こ、高校はどこにするんですか?」
「あー、まだ決まってないんだよね。それより、神宮寺でいいよ。なんかお兄さんってのは落ち着かなくて」
「あ、分かりました。神宮寺先輩」
それから会話はなくなり無言の昼食が続いた。
途中で戻ってきた花音からは「お通夜?」と言われた。
◆◇◆◇◆◇
放課後。私は校舎裏に一人でいた。
靴箱に手紙があって、ここに一人で来てほしいと書かれていたから。
そんなんじゃないとは思うけど、万が一があるから無視できなくて。
「おー、いたいた」
「本当だー。キャハハ」
「うそ……」
はめられた。そう思ったときにはもう遅かった。2人に囲まれた。
鳴りを潜めていたから忘れていたけど、私はいじめられているんだった。
「どうしてお前最近男といんの?」
一人の女子が睨みつけて問いかける。
「……た、ただの、友達、です」
そう答える私の声は震えていた。
「何言ってるのか聞こえない!」
「きゃっ」
思いきり肩を押され、地面にお尻をつけてしまう。
「お前みたいなブスは地面這ってて!」
「キャハハッ」
どうしてこんなに惨めな気持ちにならなきゃいけないんだろう……。私が何をしたって言うんだろう。
「――あ、いた、桜木さん」
横から低く、どこか安心するような声が聞こえた。
この声は、
「……神宮寺先輩?」
どうしてここに?とか、そんな疑問よりどこか安心していた。
「ぷ……ふふ、あははははっ」
「キャハハハハッ」
二人が笑い始めた。嘲りが混ざった嫌な笑い声だ。
「なに、こいつ。ヒーロー気取りかよ」
「というか最近一緒にいたのソイツ?なんだよ先に陰キャですよって言えよ。なら見逃したのに」
酷い……。どうして初対面の人にそんなこと言えるの?
私の目にはもうこの人たちが同じ人間には見えなかった。
「止めて……」
「はあ?なんて言った?」
「止めてって!!」
神宮寺先輩は関係ないんだ。やるなら私だけにして。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます