過去
幼い頃から喋るのが苦手だった。
だからか中学入学してから私は2人の女子にいじめられた。
内容としては物が隠されたり、落書きされたりだ。
それが半年の10月まで続いて、最近では傷が残らない程度に暴力なんかもされるようになった。
辛かった。でも何とか耐えれてはいた。親友の花音が居たから。
しかし、そんな私が気にくわなかったのかいじめてくる女子が言った。
「次はアンタの傍にいる神宮寺って女もいじめてやろうかな」
高圧的な態度で醜く笑いながら脅す姿に情けないけど体が震えた。
この人たちならやる。そう頭が言っていた。
◆◇◆◇◆◇
「……どういうこと?」
「もう私と一緒にいちゃダメ。花音を巻き込んじゃうから」
女子に脅迫されたその日に私は花音に話した。
相談でもなく、絶交の話を。私のせいで親友が傷つくのは見たくない。
寂しいけど仕方ない。
「嫌だ」
でも、花音はきっぱりと断る。迷いもせずに。
「ど、どうしてっ?いじめられるんだよ?」
「絶対に嫌だ。今、離れたら一生後悔する」
花音の瞳には揺るぎない決意があった。
嬉しかった。でも、それじゃいけないんだ。花音が被害を被るくらいなら私がいじめられる。
「私を巻き込みたくないって言うけどね。私、もう見てられないよ。もえちゃんが傷つく姿は」
「あ……」
そうか。
いじめられて傷つくのは私だけと思っていた。でも、花音も傷つくんだ。
「ということでね、秘密兵器を出すことにした。無視しとけば止めると思ってたんだけど、甘かったみたい。あっちがその気なら私たちもやるよ?」
暗い雰囲気から一転して花音が悪い笑みで言う。
えぇ?何を?
「秘密兵器、その名も『バカ兄』」
「……え?」
バカ兄って花音の口から時々出てくる花音のお兄さんだよね?
「ごめんだけど一緒に行動してくれる?私も一緒にいるから」
あぁ、そうか。花音のお兄さんは中3って言ってたら。先輩がいればあの2人も流石に手を引くよね?
「ありがとう。じゃあ甘えさせてもらうよ」
すごいな花音は。こんな方法を思いつくなんて。
「あ、でも一つだけ。バカ兄の顔は見ない方がいいよ」
「どうして?」
「認めるのは癇に障るけど、ヤバいから」
全然分からないよ……
◇◆◇◆◇◆
「えっと、花音の兄の伊織です。よろしく?」
次の日。花音がお兄さんを早速紹介してくれた。
「お手間かけさせてごめんなさい。迷惑じゃなければよろしくおねがいします」
お兄さんの顔を見てみる。
ヤバいって言ってたからイケメンか強面なのかなと思っていたけど、どちらでもない。
眼鏡をかけている普通の男性だ。いや、でも少し美形かも。
「ほらちゃんと私たちのこと守ってよバカ兄」
「あいよバカ妹」
あ、性格花音に似てる。兄妹だなぁ。
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