帰路
「もう大丈夫?」
すっかり泣き止んだ萌香に問いかける。
「はいっ!いつもの可愛い後輩ですよっ!」
「そうか、なら早くどいてくれ」
俺は未だにソファーに押し倒されている状態のままだった。
「えー、もう少しいいじゃないですか〜」
萌香はそう言いながらその場で暴れる。
「おい」
こんな状態花音なんかに見られたら……
パシャ
「「あ……」」
パシャシャシャシャシャシャシャシャ……
「無言で連写しないで」
「何か萌香の気持ちを考えれば嬉しいんだけど、バカ兄が私の親友としてると思うと複雑……」
「……どう見ても違うよね」
確かにそうは見えないこともないけど。
というか、萌香の気持ちを考えれば嬉しいってどういうこと?
「二人とも何の話をしてるんですか?」
萌香は分からないらしく不思議そうな顔をしている。
「もえちゃん、今のバカ兄との態勢見て」
「うん……あ、」
萌香の視線が下がり、萌香の顔が見る見るうちに赤く茹で上がる。
「せ、せせ先輩っ、わ、わわわ私に何をしてるんですか?!」
「俺は終始被害者なんですけど」
「そ、そういうことはデートして、付き合って、高校を卒業してからですよっ!」
真面目だ。
てか、どうして俺は怒られてるんだ?
「俺はお前をそういう目で見たことないぞ?」
「何でですかっ?!!」
「もう面倒くさい!早く離れて!」
怒鳴るようにして萌香に言うと、萌香は渋々といったように俺を解放する。
「花音、今日はもう帰るよ。またね」
「うん、ばいばい」
やっと帰るのか。
「そんなに寂しそうにしないでくださいよ先輩。明日も来ますので」
「寂しくない。来なくていい」
「ツンデレですねっ」
うっざ。
萌香は玄関まで行き靴を履く。
6時か……。
「お邪魔しましたー」
「ちょっと待って。家まで送るよ」
外は明るいけど一応な。
「……え?」
萌香が少し驚いた表情を見せる。
「何だよ」
別に普通だよな?萌香は女の子なんだし。
「……やるなバカ兄」
「せんぱ〜い、やっぱりまだ別れたくなかったんですねっ!全く仕方ないですね、送らせてあげますっ!大好きな先輩の願いですからねっ!」
やめようかな。うざい。
……それにしても『大好きな先輩』って何だよ。萌香ってそんなこと言うやつだっけ?
大体は『私のこと好きなんですか〜?』って感じで俺が萌香に惚れてるみたいな発言しかしなかったのに。
まあ、萌香の発言の8割は虚言だからな。気にするだけ無駄か。
「ほら早く行くぞ」
「は〜い」
靴を履いて外に出る。
「えいっ!」
萌香が俺の腕をぐいっと引っ張り自分の腕と無理やり絡める。
「おい」
「えへへ。照れてるんですか?」
隣を見ると楽しそうに笑う萌香が。
「顔赤いぞ?」
「……ばか」
萌香は顔を下に向ける。
だけど、腕は組んだままだった。
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