解決

「今、なんて言った?」

「もう1回、言って?」


 二人に睨まれる。怖い……だけど、逃げたらダメだ!


「神宮寺先輩を悪く言わないでッ!」


「はあ?」

「何それムカつくんだけど?」


 一人が私に近寄り腕を振り上げる。

 殴られる!


「っ……」


 咄嗟に目を閉じるけど衝撃が中々来ない。恐る恐る目を開くとそこには拳を受け止める神宮寺先輩の姿があった。


「先輩っ」


「たまたま?まあいいや。実は私小6まで空手しててさ。だから気をつけてね」


 そう言って先輩に殴りつける。


「奇遇だね。俺も小6までしてたんだよ。空手」


 神宮寺先輩は女子の拳を掴んでいた。

 ……すごい。


「桜木さん、眼鏡持ってて」


 神宮寺先輩がそう言って私に眼鏡を渡す。


「ぁ……」


 ――『バカ兄の顔は見ない方がいいよ』

 花音が私にそう告げた意味がようやく理解できた。

 少し美形?そんなものじゃない。イケメン過ぎる。


 神宮寺先輩が前を向く。


「桜木さんには手を出さ、せない……よ?」


 神宮寺先輩の歯切れが悪くなる。

 それもそうだろう。さっきまで睨みつけていた2人が私たちに背を向けているのだから。


「ちょ、おい」

「わ、分かってるって」

「イケメン過ぎんか?」

「それな。心臓ヤバい」

「落ち着こう」

「すぅーはぁー」


「何してんだ?」


 神宮寺先輩が声をかけると2人は一斉に振り返り、


「連絡先交換して下さい!」


 スマホを差し出し腰を90度に折っていた。


「何言ってんの?」


 声のトーンは変わっていない。でもどこか威圧を感じる声音だった。


「俺なんかの連絡先を知ってそっちに何のメリットがあるんだよ?どうせ悪用するんだろ?」


 ……もしかして、神宮寺先輩って無自覚?


「初対面だけど君たちへの信頼度は既にゼロを切っている」


「……っ!い、いいの?交換してくれないならその女もっといじめるから!」

「そ、そうよ!」


 私を人質に?!でも、その発言逆効果だって分からないのかな?


「その時は潰すよ?」


「「ひっ」」


 神宮寺先輩はどんな顔をしているんだろうか?

 先輩の顔を見ている2人が涙目になってる。

 そして、2人は走り去っていた。


「大丈夫だった、桜木さん?」


 神宮寺先輩が振り返る。

 やっぱりイケメン。


「はい、お陰様で。本当にありがとうございました」


「お、お礼なんかいいよ、俺なんかに。花音に頼まれてなかったらたぶん助けてなかったよ?」


 嘘だ。神宮寺先輩はたぶん助けてくれる。

 いじめられていた私に話しかけてくれた花音みたいに自分の身をかえりみずに。

 やっぱり2人は似ている。


「神宮寺先輩、これ」


「あ、眼鏡。ありがとう」


 神宮寺先輩が眼鏡をかける。

 うん。私はこっちの方が良いと思う。

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