暴落
「あは、あはは。みんな、僕より神宮寺くんを信じるって言うのかい?」
クラスメートに必死に訴えかける上石。
その表情は焦りに満ちていて、クラスメートはもはや呆れを含んだ視線で見ている。
「……おかしいだろっ。あの陰キャより俺の方が上なんだよっ。どうして誰も俺を……」
その場で俯き呟く。
低く怨念の籠もった声は少し離れたクラスメートには届いていないのだろう。
でも、俺たちには届いている。
星奈ちゃんや由香里さんがさほど驚いていないあたり上石の性格を察していたのか。
「……クソ陰キャが、いつか必ず……」
上石がそっと頭を上げる。
その瞳には光は宿ってなく、
「今日の所は引くよ。絶対に助けてあげるからね、星奈さん」
唇だけが歪に上がっていた。
上石は教室から出て行った。
◇◆◇◆◇◆
上石が出て行った後、俺と星奈ちゃんはクラスメートから謝罪を長々浴びることとなった。
俺も星奈ちゃんも思うところはあるけど最終的には赦すことにした。
「はぁ、終わった」
疲れがどっと体を襲う。
「だね」
「疲れた」
星奈ちゃんも由香里さんも疲れている様子だ。
……やっぱり俺のせいだよな。
クラスメートの俺への信用が薄かったから上石の策に簡単に嵌まった。
そして、クラスメートからの信用が薄いのは俺が積極的にコミュニケーションを取ろうとしなかったから。
「俺、変わるよ」
二人にそっと伝える。
「どういうこと?」
二人とも首をかしげる。
「とりあえず容姿を整えようと思うんだ。まずは髪を切って」
「……え?」
「そ、それは止めときなって!」
星奈ちゃんが啞然として、由香里さんは必死に止めてくる。
「いや、これでいいんだよ。顔見えた方がみんなも話しかけやすくなるでしょ?」
「……星奈」
「……うん。たぶん伊織くんは鏡を見たことがないんだよ」
「……大変だね」
「……うん」
よし、早速今日切りに行こう。
そして、明日誰かに話しかけよう。
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