結果

「始め」


 教室にいる者が一斉にペンを握る。


 テストは8教科の800点満点。


 ペンを握る手は震え、心臓は暴れまくっている。

 学年一位に勝とうとしているのでから当然だ。


 でも、落ち着け。やれるだけのことはやった。妹に勉強しすぎて心配されるぐらいだ。


 やろう。星奈ちゃんのために。



◆◇◆◇◆◇



「じゃテストの結果返すからな」


 出席番号順に担任がテストの結果が書かれたプリントを渡される。


「い、いいい伊織くん!」


「な、なな何だい星奈ちゃん?」


「ど、どどどどうでしたか?」


「ま、ままままあまあ……い、いやで、できた……い、いや、ああぁぁっ」


 ヤバい。俺も星奈ちゃんも緊張しすぎて会話になってない。


「二人とも落ち着きなよ。今焦っても結果は変わんないんだから」


 横から由香里さんが口を挟む。


「だからこそだろ!」


「きゃっ、そ、そんなに顔寄せないで!」


「あ、ごめん」


 興奮しすぎて由香里さんに詰め寄りすぎた。

 また嫌われたかも……。


「如月」


「は、はい」


 俺の番まで後5人……。


「……神宮寺」


 来たっ。


「は、はい!」


 席を立ち担任の元まで足を進める。


 星奈ちゃんや由香里さん、クラスメートの視線が俺に注がれる。


 担任の高峰先生に一枚のプリントを渡される。

 受け取り席に戻る。


「すぅーはぁ」


 深呼吸だ。


 震えながら2枚折りされているプリントを開く。


「うそ……っ」


「ッ!!」


 隣から見ていた星奈ちゃんが声を漏らす。由香里さんは息を呑む。


「あ、神宮寺、学年一位だったぞ」


 高峰先生が思い出したかのように言った。



 【神宮寺伊織 754/800 1/321】



「……ぁ」


 教室が静まり返る。


「おっしゃあぁぁぁっ!!」


 思わずその場でガッツポーズを決めてしまう。


『ええぇぇぇぇぇ?!』


 教室が騒音に包まれる。驚嘆の声だ。


「伊織くん!」


「うおっ」


 星奈ちゃんが勢いよく抱きついてくる。

 ちょ、まずいって!胸に柔らかいのが当たっているのもそうなんだけど、クラスメートの視線が……。


「ありがとう」


 ……もうどうにでもなれ。


「気にしなくていいよ。俺が勝手に始めて、そして勝っただけだよ」


「それでも、ありがとう伊織くん」


 優しい声で俺の耳を撫で付ける。


 俺は半ば無意識に星奈ちゃんの背中に手を……


「二人ともそこまでにしときなって!どうすんのよ!」


「「あ……」」


 すっかり忘れていたけど、ここ教室だった。


 この後俺は男子共に殺意の籠もった尋問を受けた。

 星奈ちゃんは女子に囲まれていた。


 俺も星奈ちゃんもその間顔を赤くしていた。

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