覚悟
「何かあった?」
由香里さんが俺に聞く。
……言っていいのか?隣には星奈ちゃんがいる。
「私も気になる」
……どうせ明日にはバレるか。
「上石くんと今度のテストで勝負をするんだ」
「「ええ?!」」
そんなに驚かなくてもいいじゃん。
俺も驚いているんだよ。だってまさか学年一位だとは思ってなくて……。
「負けたら何かあるの?」
星奈ちゃんが俺に尋ねる。
「……負けた方は、星奈ちゃんに近づけない……」
「……え?」
目を見開く星奈ちゃん。その隣の由香里さんも啞然としている。
「か、勝てるんだよね?」
星奈ちゃんが焦りの混じった声で聞いてくる。
「……最善を尽くすよ」
正直舐めてた。上石のことを。
「……待ってよ。もしも伊織くんが負けたら私はもう伊織くんと話せないの?」
……何やってんだよ俺は。上石が提示した条件が一番苦しいのは星奈ちゃんじゃないか。
これじゃただの自己満足だ。
「ごめん……」
「……嫌だよ。まだ何もできてないよ。想いを伝えてから何もできてないよ」
星奈ちゃんがポツリと吐き出す。その声音には悲しみが入り混じっている。
「うそ……それって、星奈が伊織を……?」
……できるかできないかじゃない。やるんだ。
俺が星奈ちゃんから笑顔を奪ってどうするんだ。
「分かってる。俺もまだ星奈ちゃんのこと全然知らないままだ。必ず勝つから、そしたら教えてよ。星奈ちゃんのこと」
「うん!」
今回のテスト、星奈ちゃんのために全力を尽くそう。
「……あの、私がいるってこと忘れてない?」
……あ、忘れてた。
「ゆ、由香里ちゃん、その……」
「分かってるって。誰にも言わないよ、星奈が伊織に惚れてるってこと」
「く、口に出さないでよぉ」
顔を赤らめる星奈ちゃん。俺も照れるんだが。
「……なんだ、入《はい》れる隙ないじゃん」
隣からボソボソと耳に入る。
「何か言った由香里さん?」
「いや、何もないよ。星奈頑張れ、いけるよ!」
何の応援だよ。
「……うん、ありがとう」
少し歯切れ悪い星奈ちゃん。
表情も少し浮かない様子だ。
まだ由香里さんに緊張しているのかな?
早く慣れるといいんだけど。
◆◇◆◇◆◇
次の日。
朝、学校に登校するともう既に俺と上石がテストで勝負することが広まっていた。
情報早いな。
ただ、負けた方が星奈ちゃんに近づかないっていうのは言ってないらしい。
まさか学年を通して広まるとは。これは絶対に負けられないな。
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