本性

「……全部計算してやっていたってことか?」


 善意で星奈ちゃんに話しかけて、善意で星奈ちゃんを昼食に誘っていたんだと思っていた。


 いや、途中ぐらいで上石くんって星奈ちゃんのこと好きなのかな、なんて思っていたんだけど。

 とんだ腹黒だな。


 自分が周りからどう思われているのか正しく分かっているってのがたちが悪い。

 コイツはそれを利用しきっている。


「お前は星奈ちゃんをどうしたいんだ?」


 星奈ちゃんに惚れているのか?


「あんな女、釣り合うのは俺しかいねぇだろ。だから俺が拾ってあげてんだよ。なのに無駄にガード高いんだよ」


 腹が立つ。イケメンなのは認めよう。コイツはイケメンだ。

 だけど、イケメンだからって何でも赦されると思っていないか?

 星奈ちゃんは傷ついてたんだぞ?


「お前ごときが星奈ちゃんと釣り合うだと?笑わせるなよ。

 星奈ちゃんはお前と違って、かわいい上に性格も良いんだよ!」


 全然釣り合いが取れてねぇんだよ。


「チッ」


「くっ」


 マジか……っ。


 コイツ、今俺の顔面殴ろうとしてきたぞ?!


「あまり調子に乗んなよ陰キャの分際で」


 俺喧嘩とかやったことないよ。

 ここで死にそう。


「次、期末テストがあるな?そこで勝負だ。俺が勝ったらお前はもう星奈に近づくな。お前が勝ったら俺はもう星奈に近づかない」


 俺って前回のテスト何位だっけ……。

 中の上ぐらいだったような。

 勉強あまりしなかったよな。勉強したら行けそう。


「いいぞ」


「ふっ、バカだな。お前のクラスで宣言するから負けても逃げきれるなんて思うなよ」


「それでいい」


 この返事に満足したのか上石くんは去って行く。


「はあ、終わったぁ」


 よし、星奈ちゃん待たせてるし早く帰ろう。


 先に帰ってと伝えたんだけどな。待っとくって言ってたんだよな。



◇◆◇◆◇◆




「あれ?由香里さんも一緒?」


 校門に立つ星奈ちゃんと由香里さん。


「だ、ダメだった?」


 どこか不安げに聞いてくる由香里さん。


「い、いいよ」


 誰だよ。昨日まで高圧的な態度取ってたくせに。


「あ、由香里さん」


「なに?」


「上石って前回のテストの順位何位ぐらいだったか分かる?」


 流石に正確には分からないと思うんだけど、まあどのくらいか分かればいい。


「え?知らないの?」


 え?何その反応。知らない人はいないみたいな……。


 自分からテストの順位で勝負とか言うからある程度高いのは予想しているんだけど……まさかな。


「一位だよ」


 ……ハイスペック腹黒イケメンかよ!

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