自作自演

「昼ごはん一緒に食べていい?」


 え?


 昼休み、石上くんが来る前に教室から出ようとしていたら山……由香里さんに誘われた。


「い、いいよ」


「本当?!ありがとう!」


 こっちの台詞だよ。とうとうぼっち飯回避だ。

 クラスメートの驚くような視線はあれだけど、気にしない。


「わ、私も食べていいよねっ?」


 どこか焦るように星奈ちゃんも誘ってくる。

 そういえば、前に一緒に食べようって誘われてたんだった。石上くんがいたから無理だったけど。


「もちろんだよ。由香里さんもいいよね?」


「いいよ」


「あ、ありが――」


「星奈さん、今日も一緒に食べようか」


「あ……」


 三人で一緒に食べようとなったときに現れる上石くん。

 やっぱり来るのか。どうしよっか。


「あ、あの、私もう一緒に食べる人ができたので、その何て言うかその……」


 石上くんに対してあたふたする星奈ちゃん。

 ……結構な間昼休み過ごしといたのにそんなに仲は深まっていないのか?


「つまり、フラれたのよあんた」


 そこで由香里さんが助っ人に入るけど言い方……。


「あはは、そういうつもりで星奈さんを誘っていたわけではないよ。良かったね星奈さん、友達ができて。じゃあ僕はお暇するよ」


 お、やっぱりイケメンは心が広いんだな。

 ん?石上くんがこっちに近づいてくる。


「放課後、体育館裏に来い。一人でな」


 ……激怒じゃん。


「私は山本由香里。由香里でいいよ」


「如月星奈です。私も星奈でいいよ。よろしくね由香里ちゃん」


「うん、よろしく星奈」


 二人はのんきに自己紹介らしきことをしている。


「分かったよ。放課後、体育館裏な」


 返事をすると石上くんは去って行った。


「はぁ」


 怖いな。


「食べよ伊織くん?」


 ま、星奈ちゃんが喜んでるしいいか。



◇◆◇◆◇◆



「来たか」


 石上くんに言われた通り放課後、体育館裏にまで足を運んだ。


 そこで、石上くんが体育館裏の壁に背をつけて待っていた。


「……何の用かな」


 どこか刺々しさを見せるその瞳は、いつもの様子とは違う。


「何しやがった。俺の作戦は完璧だったんだ」


「作戦?完璧?それにって……」


「この俺が星奈と全員の視線が集まる所で親しげに関わることでクラスの女子の嫉妬を生み星奈を孤立させる。そこで俺が星奈を助けて落とす。

 完璧な作戦。だったのに、てめぇみたいな陰キャが邪魔しやがったせいで台無しだッ!どうして、星奈を特にうざがっていた一人が星奈と喋ってんだよッ!」


「……誰だよ、お前」


 第一印象と大きくかけ離れた言動に未だに目の前にいるのが石上くんだと信じられない。


「あ?俺は、お前みたいな陰キャと違って学年一のイケメンで天才の石上颯人だよ」


 どっちが本物……いや、そんなのはもはやどうでもいい。

 お前が黒幕だったのかよ。お前が星奈ちゃんを苦しめたんだな。



 


 

 

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