良い人なのかも
星奈ちゃんへの愛を山本さんにぶつけたら頭が冷めてきた。
ダラダラと汗が流れる。
……ヤバい、怒らせたかも。いや、確実に怒っているだろ。
だって今の状態、壁ドンだぞ?からの至近距離で星奈ちゃんへの愛を叫ぶ。
ヤバい奴だ。
上目でちらっと山本さんの表情を伺う。
「「っ!!」」
目が合い思わず逸らしてしまう。
まずい。顔が赤くなる程怒ってる。謝った方がいいよな。
「ご、ごめん!カッとなっちゃって!!」
急いで壁ドンの体勢を止めて全力で頭を下げる。
赦してください!本当にこれ赦してくれないとクラスでの俺の居場所がなくなるから!
……元々ないような気もするけど。
「……せ、誠意が足りてないんじゃない?め、目元が隠れているから伝わらない」
そうか、確かに失礼だったかも。
ポケットにあったかな……あった。ヘアピン。
「本当にすみませんでした!」
「はぅ。……いいよ赦す」
「本当に?!ありがとう!」
「だめっ、笑顔をみせにゃいで……」
山本さんが膝から崩れ落ちる。
「だ、大丈夫っ?!」
「う、うん!だ、大丈夫だから近寄らないで!!」
……嫌われた。たぶん初めから好かれてないけど、嫌われた。
「わかったよ。もう帰るから。でも、その前に一つだけ。
星奈ちゃんを無視するのをやめてくれないか?星奈ちゃんはきっとアイドルで忙しくて学校生活をまともに送れなかったと思うんだ。だから、アイドルをやめた今は楽しく学校生活を送って欲しいんだ」
「も、もちろん!」
「ありがとう。じゃあ俺は帰るよ。本当にごめんね」
俺は山本さんに背を向ける。
嫌っているそうだから早く帰ろう。
「ま、待って!」
「え?」
まさか、今になって赦さないとでも?
「その……如月さんのこと好きなの?」
「うん。好きだよ。アイドルとしての星奈ちゃんがね」
「異性としてではないんだ……」
「まあ、俺はガチ恋はしなかったかな」
たまにアイドルにガチ恋するような人はいるらしいけど、実らない恋はしたくないよね。
「あと一つだけ。あ、あの、女の子のタイプは?」
え?それ俺に聞く?
「俺と上石くんのタイプは違うよ?まあ、強いて言うなら何事にも努力できる人かな」
「じゃ、じゃあ女の子の好きな外見は?」
「俺はそんなに外見は気にしないんだけどなぁ。まあ、あえて言うなら黒髪の子がいいかな」
「うぐっ、私金髪だ……」
「本当に外見はそこまで見ないんだけどね。じゃ、俺はもう帰るから。じゃあね」
「うん、ば、ばいばい」
山本さんが手を振る。
……何か最初と対応がかなり違うな。本当は良い人だったのかも。
クラスの星奈ちゃんへの待遇が変わるといいな。
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