恋の前兆

 思考が停止する。


 陰キャに壁ドンされたからだ。


 陰キャと言えど男。体格的に負ける。だからコイツが全力で私を捕まえようとしたら、逃げるのは困難だろう。

 私、このまま捕まったらどうなるの?


 叫ぼう。


 陰キャが前髪をかき上げる。


 ……え?嘘でしょ?イケメン過ぎない?

 いや、本当にイケメンなんだけど!!


 ちょっ、ちょっと待って?!顔近いんだけど?!ヤバいヤバい!


 陰キャがこんなにイケメンなんて聞いてない!颯人くんと同じくらい、いや人によっては颯人くん以上って言う人もいるかも。

 私は、断然こっちが好みですッ!!


 とにかくそのくらいイケメンって言うこと!


 心臓が暴れてる。聞こえていないよね?

 顔も赤くなって……。これじゃ、まるで私がコイツに惚れてるみたいじゃない。


 え?これってあれ?今からされちゃうの?キ、キキ、キスとか……。

 わ、私の口臭大丈夫かな?というか、臭いって思われていないかな?


 だめっ、まだ心の準備が……っ。


「俺が惚れたのは、顔だけじゃない。声やダンス、仕草やファンサ、そしてそれに至るまでの努力だッ!」


「ふぇ?」


 ……今、何て?


 

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