第1話 4



†砦 内部†



砦の内部は、いたってシンプルだった。

煉瓦とランプのみで、城のような装飾などはなく置いてある物も必要最低限のものだけ。



エグザスとの通信を切ったベルは、キーウエポンを停止させて2人を見る。




「さて、いきますか。」



「おいこら。

ベル、さっきエグザスとの通信で俺の頭皮がどうのっていってなかったか?」




ハゲの話をぶった斬るようにシオは、突然ベルの背中を押しながら出口に向かって歩く。



「いーから行くよ。」




されるがままシオに押されてるベルに対してハゲは、真剣な表情でベルをみた。


やり過ぎて、怒らせたかな?

ベルは一瞬、そう思っていたようなのか困った顔をしたが…どうやら違うみたいだった。


ハゲの瞳の色が一瞬だけ金色に変わる。




「ベル…なんか、聞こえないか?」





ハゲがそう言うと、後ろにあった大きなコンテナが爆発して一台の大型車が走っていった。

いままで、姿を見せなかったのは間の回収のためだったのだろう。





軽く舌打ちしたベルは、キーウエポンを起動させて杖形態にする。





「油断した!

多分、アレが本命くせぇ。


とりあえず、先に向かうから2人は各自でなんとかして。」




“心の0段”




ベルは、直ぐにキーウエポンを起動させると杖形態にして先端を地面に引きずりながら走りそのまま杖の先端を上げた。

赤い雷をバリバリと光らせた先端から小さな光が前方に向かって飛び、地面に当たった箇所に魔方陣が浮かぶ。


魔方陣から召喚した瓦礫でできた一体のユニコーンに跨がり、車を追いかけた。


ベルはユニコーンを全速力で走らせているが、車との距離は縮まず引きはなはれていく。


もう間に合わないと思われるほど距離を離された時、茶髪の髪をしたシスターがベルの視界に入った。

どうやら、工作員として別の所から入った仲間が間に合ったのだろうベルは思わず安堵の声を上げる。




「助かった。」




肩にかけている一つに纏めた大きな密編みのおさげ。

真っ白な服にベルたちと同じコートを、着ていて右手にもつキーウエポンは背丈と同じくらいの杖のような形をしていた。




「…間違いない、“アンナ”だ。」





アンナは、車がすれ違う直前に足元に心特化型の特殊なキーウエポンで地面を叩く。



“心の0段”




すると、アンナを中心に光の円が出現する。





「止まりなさい。」




優しく力強い声が辺りに響くと、車は落とし穴に落ちるように地面にめり込んでいった。

車がめり込んだ地面を見ると、地面が柔らかい砂に変わっているようだ。



砂が、タイヤの細部に入り込んだせいかタイヤが回っている様子はない。



“心の0段”



完全に車が止まると、アンナは車の荷台まで移動して杖の先で扉を叩く。

先から赤い雷がバリっと光った後、扉に手をかけて力技で開く。





「よく、頑張りましたね。

もう…大丈夫ですよ。」




アンナは優しく微笑むと目の前にいた小さな女の子に白いコートをかけてあげていた。

間の人達は、歓喜の声をあげている。



突然の異変に混乱した獣達も、運転席から下りるとアンナ達の元に走ってきた。




「車を止めたのは、貴様カ!?」


「ニンゲンのメスなのカ!?

なら、この車だと都合が良イ。


貴様も間に加えて…。」



獣の声を遮るように強く重い声が響いく。

身体能力も、体格も遥かに上の獣を声だけで制しているのだ。



「…黙りなさい。」



決して、大きな声ではない。

耳ではなく、胸に響くような声だった。



“心の0段”



アンナは、獣が怯んだ隙に杖の先を獣に当てる。

すると赤い雷が全身を包み込むまるで銅像のように全身が真っ黒になって固まった。




「ナ…!?」



「驚いている場合ではありませんよ。

次はアナタの番ですわ。」



“心の0段”



アンナはそう言うと、杖の先をもう一匹の獣にも素早く当てた。

さっきとは違い、足の方から徐々に赤い雷が上に上がっていてそこから黒く固まっていく。

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