第1話 3
「君は何型?
貧血気味だから、少しだけ輸血する。」
「確か…AB型。」
アイクは、それを聞くとコートの懐から小さいケースを出す。
ケースを開くとA、B、O、ABとかかれた小型の注射器があった。
「今度はきちんと、補充されてるな。」
アイクはそう言うと嬉しそうにABのラベルが貼られた注射器をケースから取り出し黒髪の女性の手を握り細い右腕に注射を射つ。
黒髪の女性は、その様子を不思議そうに見つめる。
「俺たちの扱う心は、ケガは治癒でしても血液までは修復ができない。
だから、応急措置で射たせてもらった。
5分もあれば、健康体に戻れるだろう。
さて…とすぐに終わらせるから、アンタはここで大人しくしていな。
ベルが作った拠点は、簡単には壊れたりしないから…家で休むようにノンビリするといい。」
アイクは、そう言うとキーウエポンを剣形態させてかまくらからでていった。
アイクは走りながらベルがやったように肉体強化を行く。
“体の1段”
外が寒いからか、白い煙と大きな機械音を出しているキーウエポンから放たれた雷が全身を包みベルと同様に肉体を強化した。
あっという間に強化を終わらせると獣たちに向かって次々とキーウエポンを振り回していく。
走る速度は、ベルの比ではない。
目で追えないのだ。
「そら、気を抜くなよ!」
アイクの一声で、様子見で止まっていた獣達も動き始めた。
一部の獣から噴水のように血が噴き出していても怯む事なくアイクや他のメンバーに対しての攻撃の勢いを増やしながら。
「…チッ。
逃がすな、絶対に駆除するゾ!」
「駆除なんて、よく言えたものだな?
偉くなったもんだ、ワンコも。」
アイクは、指示をだしている獣を優先して攻撃をしていた。
獸達もアイクを目で追えないのか、次々と斬られていく。
“技の4段”
アイクは、武器を銃形態にして雷で出来た球を獣達に向かって飛ばした。
飛んでいった雷球は、爆発を起こして獣達を土煙と一緒に包んでいく。
「おいおい、威勢の割には呆気ないんじゃないのか!?」
「まぁ、最悪…砦は捨てよウ。
だが、間は渡さン。」
アイクが得意気に、キーウエポンを肩にかけると上空から声が聞こえる。
すると、大きな爆発音がかまくらの方から聞こえた。
「な…!」
驚くアイクがかまくらの方をみると、天井から煙をあげているかまくらとその上空に止まっているヘリが視界に入った。
ヘリからはバンジージャンプのように紐をくくりつけた獣が1匹落ちてきている。
このあとの行動は、嫌でも分かった。
「苗床は、確かに返して貰っタ。」
獣は、そう言うと女性を抱き上げて直ぐに一緒に空にあがっていく。
女性はとっさに近くに刺さっていたキーウエポンを掴んだ。
さっき、ベルが残したものを。
キーウエポンを掴んだおかげで、獣が上に上がる速度が少しだけなくかった…が、ヘリが上昇しなくなったわけではない。
「諦めロ!
間になったときから、貴様の運命は決まったのダ!」
段々とキーウエポンが抜かれていき最終的には地面から引き抜かれた。
段々と地上から、上がる様子を女性はただ見ているしかなかった。
「…諦めるな。」
静かだけど、力強い声が聞こえた。
その声を聞いたら時に、力が戻ったのか目に生気が戻っていた。
「離せ!!」
女性は、持ってきたキーウエポンを振り回す。
体勢が体勢だから、獣に当たるわけがなかったし…起動すらしてなかったから当たっても致命傷になる訳がない。
「この体勢では、俺には当たらなイ。
ヘリについたら、再教育を始めるから覚悟し…。」
獣は話の途中で、爆発した。
爆炎の代わりのように真っ赤な血が女性を包み込む。
女性を掴んでいた獣がいなくなった為に彼女は下に落ちていく。
だけど、自然と落ち着いた表現になっていた。
間になるよりかは、死んだ方が遥かにマシだと考えたからなのだろう。
「もっと力を抜け、舌を噛むぞ。」
先ほどの声が聞こえると、黒髪の女性は一つの人影に受けとめられた。
声からして男性のようだ。
銀髪、赤と青の左右の色が違う瞳。
銀髪を隠すように被られたフードをした男性。
右手に握る銀色のキーウエポンの他に剣形態の銀色のキーウエポンが腰に装備されていた。
それが、女性が見た姿だった。
「…よく耐えたな。」
銀髪の男性が言った言葉は、そっけないものだった。
だが、黒髪の女性は声にだしてはいないものの、涙を流し肩を揺らして泣いていた。
それほどまでに、男性の一言が胸に響いたのだろう。
銀髪の男性は、跳んで女性を受け止めたみたいで、着地と同時にヘリが爆発した。
勿論、無数のヘリの破片が女性達に向かって落ちてくる。
「そこでじっとしていろ。」
銀髪の男性は、既に剣形態になっているキーウエポンの柄を握り腰から取り出すと大きな機械音の煙を出しながら起動させる。
そのキーウエポンの刀身は、ベル達に比べると厚く長かった。
「…っち。
アイツは、周りも見れないのか。」
銀髪の男性は、その場で跳躍すると降り注ぐヘリの部品を斬っていく。
斬り損ねたやつは、何処かから飛んでくる銃弾に狙撃されて破壊されていった。
ピピピ…
銀髪の男性が地面に着地すると通信器が辺りに響く。
「ベルか…、“エグザス”だ。
こちら側は、一先ず落ち着いた。
そっちは、どうだ?」
『こちら、ベル。
ハゲの頭皮が損傷した以外は、無事だ。
そこの人以外の苗床は、既に連れ去られていたみたい。
さっき、輸送車みたいなのが走っていったけど。
とりあえず、合流するか。
これから、入り口に向かう。
それじゃぁな。』
ベルは、そう言うと通信を切った。
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