第51話 こう言う訳で


「と、言う訳なんじゃ」


 長々と話した最後を大仰かつ満面の渋い笑みで締めくくった所で、波の揺らぎ程も音を立てずに静聞し続けていた村人一同が声を合わせた。


『どうかお供させてくだされ!』


 と綺麗に何重にも重なって発された言葉を皮切りに、次々と続く。

「泣けるじゃありませんか!」

「そんなご苦労を……」

「よくぞご無事で」

「いや、お前無事ではなかろうもん」

「桃次郎様は流石ですね!!」

「素晴らしい、素晴らしい行いをなされましたな!!」

「感激ですぞ」

「すごいわ、誰にも出来る事じゃありません」

「まったく素晴らしい子孫様!」

「ならば、私どもはお手伝いをば」

「この身、生は既に朽ちた身でありますが何らかお役には立てるでしょう!!」

「お役立てください」

「この老骨お役にたちますぞぉ!」

「私こそ、助けになります!」


 村人達の瞳は一片の曇りなくキラキラと本気マジですからと言いたげである。

謙虚な遠慮がち日本人? 何それ美味しいのと言わんばかり。

この雰囲気では、絶対にノーなどとは言わせないという勢い。最早、『絶対ついて行きますぞ!』感丸出しに詰め寄って来たせいで断れそうにもない。

 折角桃太郎じいちゃんがいい気分になってるらしいので、桃次郎としては話し終わるまで空気のようにひっそりとしていようと思ったのに、いつの間にやらあちこちから熱視線を向けられるようになりどんな顔すればいいのかわからず変な笑顔で「イエ……ソンナ」と頭を掻く仕草しか出来ずにいた。


「しかしじゃなぁ、こうも大所帯でぞんろぞんろと歩くわけにもいかんじゃろうて。花魁道中じゃああるまいに。流石に全員は無理があるぞい」


 皆の気持ちはありがたいけどどうすっかいのーと空を見上げながら頭を捻る桃太郎じいちゃん。うーん、うーんと頭を左右に振り真剣に悩んでいるようだ。


「で、では。私がこの中から選出します故、暫しおまちくださいませんか!」


 おずおずと声を上げたのは、白髪に長めの白髭をたくわえた老人。

すす、っと遠慮がちに周囲より一歩前へ踏み出すと「お久しゅう御座います、桃太郎様」と深々お辞儀の姿勢を取った。


「おお、あの時の村長ではないか。では、宜しく頼むぞい」


 彼はと言うと、桃太郎が現世に人として生きていた当時村の長を務めていた者で懐かしい顔を前に思わず桃太郎は破顔する。

責任感が強く統率を上手く図れる人物であった為、この場も彼に任せるとする。


「えーゴホン。では、良いか……」

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