第4話 ゲームもほどほどに
桃次郎が今1番ハマっているのは毎日クラフト(通称:毎クラ)と言うゲームだ。
近年、実況動画なるものが急速に発達し、歌やゲーム他様々な『やってみた』系のクリエイターが増え所謂、実況者達は簡単な道のりではないものの、新たなる職として世間に受け入れられるようになっていた。
このゲームもそのおかげで人気、注目共に高まっているゲームである。
特徴と言えば、全てが四角い世界を自分の好きにカスタマイズしていけるので素人が作ったとは思えない豪奢な建築物が作成出来たり、仲間と一緒に洞窟や異世界探索に出かける事なども可能な非常に自由度の高いゲームである事だろう。又、オリジナルでワールドそのものが創造出来たり、箱庭の神様みたいになる事も可能で物語を作った上で実況者や一般人に攻略してもらうなど日を追うごとに進化していってもいる。いつログインしても、時間を忘れて没頭してしまうので時間配分や水分補給等には十分な注意が必要でもあるのが難点であろうか。
このゲームは、初回ログインで全く未開のニューワールドが生成される。
どのような地形に生れ落ちるかランダムで選定されるのだが、それによって作業のしやすさが異なる。
それこそ、桃次郎が生まれたスタート地点は広大な草原地帯で最初に必要不可欠な木が1本も生えていなかった為に、武器の一つも作れず初っ端から資材探しの旅に出なければならなかった。
何度も敵とエンカウントし、その度手痛い洗礼を受けたのだが、今は何とかかんとかで必要な素材が割と数集まったので仮拠点から本拠点を制作中である。
こんな事せずとも、楽なチート的やり方も存在する。
クリエイティブモードと呼ばれる重力の無いような状態+敵モブは存在するが攻撃してこないにした上でポケットから資材や鉱物、食糧といった物一式が何でも出し放題になる設定を行い、必要な物を出してから仮でもしっかりした拠点を建ててしまうのが良いだろう。
だが、やはりゲームとして様々襲い来る危機をかいくぐっていくという事も楽しみたかったので桃次郎はこの世界を昼と夜が時間で交互に来るようにサバイバル設定にしていた。夜は、昼間攻撃してこない敵が狂暴になって襲ってくるので何度も木の斧や剣などで戦った。ライフゼロで死ぬと生まれた地点まで戻されるのでそこからまたせっせこと目的拠点まで移動し、支度を整えるのだ。
ちなみに、この世界には普通のロールプレイングゲームによくあるセーブポイントと言うものが存在しない。
なにで記録されるかと言うと、
ベット・フトン・チェアのいずれかの道具を使う事で拠点から離れた場所でもセーブする事が可能だ。
ベット → 使用可能時間:夜
制作資材 :なし・特殊アイテム
マジックバリアが張られるので敵が近くに居ても攻撃される心配はな
し+ライフ、マジックポイント、異常状態、空腹ゲージも含めて全回復。
フトン → 使用可能時間:夜
制作資材 :綿・糸・加工草ブロック2
敵が近くに居ると眠れない。
ライフ、マジックポイントも全て全回復状態でセーブ
チェア → 使用可能時間:全て
制作資材 :木材・鉄
回復は出来ないがひとまずのセーブポイント
となっている。便利だが、ベットに至っては最上級アイテムであり何とラスボス討伐含め一周全クリアしていないと貰えないアイテムであったりする。二周目にそれを使って様々な所まで行動範囲を広げたり、取りこぼしアイテムやサブイベントへの挑戦など出来る事が各段に増えた同じだけど、新しい世界を楽しめるのだ。
必要不可欠な建築材料収集は様々な種類の木を切ったり、加工したりする必要がある。他にも、砂を集めて焼き、ガラスを作ったりどんどんひと工夫していかなければ使えない物などもあり、なかなかに工程が多いのである。海辺も遠かった為に毎日地道に敵と格闘しながら遠方の小島まで何度も足を運び集めたりしたものだ。
有名実況者の中には複数人でチームとして集まり巨大な建築をしたり、配布ワールドと呼ばれるクラフトにゲーム性を高く加えた物をインストールして遊んだりしていいるので、そう言う物にも多少なりの憧れはあるものの、今は1人で気ままにしている方が楽しいとも思う。
まぁ、ゆくゆくでいい。慣れたりオープンなどで人と遊んでみるのも面白いのかもしれないなと思いながらコツコツと作業を進めて行く。
「ここは、こうしたいなぁ。あ、窓ガラスもあそことここにはめようかな……」
「屋根は赤かオレンジっぽい素材の木材を階段ブロックに加工して、床は羊から毛を刈って白黒ツートンで敷き詰めたいな、羊の毛刈るためにハサミも作らないと……」
このワールドに誕生してから初めての本格的な『家』を作っているので色々と思考が飛躍していきがちだ。
なんせ、現在拠点としているのは土壁を削ってそこそこのスペースを広げた扉もついていない洞穴住居であり、まるで原始人である。
辛うじて作成した文明らしさと言えば、チェアと野生に生息している綿の木を刈り取ると手に入る『綿』を集め、白蜘蛛を討伐した際に落とすアイテム『糸』、それに加工した草ブロックから作った布団が1組と物入れ用の大チェストが2つ、それと真っ暗い空間には敵が湧きやすいので湧きつぶし対策にぼんやりと明るいトーチが3本刺さっている事だろうか。
「やっとここまで来れたなぁ」
ある程度揃えた物達を眺めてポツリと感慨深気に呟いた。
チェストには一応食材用と簡易の武器や防具、素材などを分けて収納しているがそれもそろそろ必要資材で満杯になって来てしまった。
洞穴原始人暮らしから、いざ、『人』への暮らしへとシフトするのだ。
本拠点はまだ、枠(つまり家の骨組みになる基礎)を決めて床に木材を並べただけに過ぎないが割と大きめな事も作用し、おかげで制作意欲がぐんぐんと高まっているのだった。
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