第5話 やっぱりそうか

 翌日の放課後、俺は影井の行動を注視していた。


 このまま友達と帰宅すれば俺のお願いを聞き入れ、航也先輩からの告白を断ったことになる。

 逆に待ち合わせ場所に行ったとなれば俺のお願いは聞き入れられず、航也先輩と付き合うことになるだろう。


 できれば前者であることを願いながら、俺は影井に視線を向けていた。


 すると、影井は自分の元に集まってきた友達に両手を合わせて謝るような仕草を見せてから一人で教室を出て行った。


 これは恐らく……。


 いや、まだ決まったわけではない。


 ダメだと頭では理解しながらも、気付かれないように影井の後を付けた。


 影井がやってきたのは人目に付かない校舎裏。


 僕の視界には航也先輩写っている。


 やっぱりそうか……。


 信じたくはなかったが、やはり未来の俺の言っていたことが全て正しかったのだろう。


 全てを理解してしまったからには、もうこの告白の一部始終を見ている必要はない。


 そして僕は影井たちに背を向けた。




 --やっぱりダメだ‼︎


 このまま終わるなんてダメだ、未来の俺が京子って人と結婚してようが、未来の影井が航也先輩と結婚してようが、そんなのは俺の知ったことではない。


 今伝えなくてどうすんだよ俺‼︎


「ちょっと待ったぁ‼︎」


 僕がそう言うと、影井と航也先輩がキョトンとした顔でこちらを見つめていた。






「好きだ。付き合ってくれ」


 私の前に立ち、告白をしてきたのは航也先輩だ。


 多少女癖が悪いという話は聞いたことがあるが、端正な顔立ちで人柄は良く、女子からの人気は間違いなく高い。


 そんな航也先輩に、私はこう返答した。


「ごめんなさい。私、好きな人がいるんです」


 私は航也先輩からの告白を断った。


 昨日秋君に、行かないでくれ、と言われたにも関わらずこの場にやってきたのは正直な気持ちを伝えるためだ。

 そうすることが私の秋君が好きという気持ちに対する礼儀でもあるような気がしたから。


 告白を断ったというのに、航也先輩は何やら納得したような表情をしている。


「やっぱりそうだよな。ここにきた時からそんな顔してたから、なんとなく察してた」

「察してたのに告白してきたんですね」

「俺、女癖が悪いって言われるけど、ただ自分の気持ちに正直なだけなんだよ。だから別に、断られたからって粘着したりはしない」

「そうなんですね……。先輩ならきっと私の何倍も良い人が現れますよ」


 私がそう告げた矢先、大きな声が校舎裏に響く。


「ちょっと待ったぁ‼︎」


 学校中に響くのではないかという程の大声で、息を切らしながらそこに立っていたのは私の想い人、秋君だった。

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