第3話 陶子②
すぐにでも会いたかったのだが、三人の都合を合わせ会ったのは、一ヶ月後の八月になっていた。土曜日の昼過ぎが良いという絵梨の希望をとったからだ。
真里との久しぶりの再会と、旧姓に戻った経緯を聞くのが主な話題となると踏んだ私は、新宿御苑から靖国通りに向かう途中にあるカフェテリアを選んだ。大通りから小道に入ったその店は、休日は人通りもうるさくなく吹き抜けの内装と落ち着いた店内は、マリアの話を聞き出すのに良いだろう。
スイーツから軽食、それにアルコールの種類が豊富なのも私のお気に入りだった。
約束の時間より十分前に着くと店内にはもう絵梨が来ているのが分かった。窓辺の席で嬉しそうに綻んだ顔をしている。手を振りながら絵梨に近づくと、
「場所が分かりにくかったけど、良い雰囲気の店ねー」
と、ペラペラと喋り始めた。
`今日も、久しぶりの外出なのに、出かけにチビが泣き出してさー`とか、
`今日ぐらいは、旦那にチビたちの面倒見てもらってんだ。せっかくの再会だもんね`とか。
普段、小学生と幼稚園の息子たちばかりの会話だからだろうか?マシンガンのように絵梨は喋りグラスの水をがぶ飲みする。
一通り話し終えると落ち着いたのか
「んで、マリアは?」
と、問いかけた。
「すぐ来るわよ」
と私が言い終わらないうちに
「陶子?絵梨?」
と、ソプラノボイスのマリアの声が小さく響いた。
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