5

おぁ〜〜〜〜おぉ


私は猫。今日もご主人様のこの「通路」に何か異変がないか、見回り中。


うん。今日も何も無いかな。そうだと良いんだけど


ーーワギャワギャワギャ!ーー


そういう時に限ってこういうことが起こったりするのよねえ。何でかな。


今のは音だね。人の声じゃない。


方向は、こっちかな


行く


何かな、道ゆく人々が皆怯えた様な顔付きで走って行く。何かから逃げてるのか


ふと、少し高い上を見てみると何やら建物から黒煙が立ち昇っていた


何あれ


不穏な事であるのは間違いないわね


どれ、行ってみましょう


行く


ーーーーー


ーーーーー


人々は相変わらずあそこから逃げているわね


ーーーーー


ーーーーー


ーーーーー


ーーーーー


ここか


見るからに危ない雰囲気が満点な雰囲気の建物だ。色は黒に近い銀色。物騒さを感じさせる。


やばいところであるのは間違いないかな。


いいや。入るニャン。


うお、なかなかに不気味な感じニャネ


匂いも雰囲気もなかなかに怖さまんてーん


変な液体も流れているし


一体どういったところなのこれ


進んでみる


はー、ここはどうやら何かの工場の様ね


何かを作っているかのよう


ここで何があったかしら


「きゃあ!助けて!おにいさーん!」


むっ?何かあったかなっ


その女の人の声を向ける方向を見てもそこには何もいなかったわ


何かしら。何に悲鳴をあげていたのかしら


「助けてえ!」


あの女の人、今度は逃げた方向からまた叫ぶ。まあこれは何回も叫びたくなるだけかな。


じゃあ、前の方に何かあるのかしら。


私、猫だけど行ってみる。


あ、変だわね。こんなに大きな工場で何で人員があの女の人一人しかいないかしら。


変ねえ。


えっなにこれ


目の前に巨大な光るタンク?


というか、筒状の何か?


これは一体


もっと近づいて、よく見てみましょう。


私はその筒状の物に目の前まで近づいた。


これ、タンクじゃない。


筒状だけど、材質が何でできているのか全く分からない。


何これ。


触ってみると、透けた。


透けた!?


これ、中に入れるんじゃないかしら。


入れた。


ニャーン!中はこれ、一室ね!誰かの一室。


さっきの女の人のお部屋かしら。


その割には何か男の人っぽい雰囲気もするなあ。


うーん。


「どうしたんだい。にゃんこさん。」


きゃっ!?


今、後ろからかっこいい男の人の声が


振り向いてみる


--------!!


まず、その容姿の魅惑さに取り込まれて何もいえなかった。何も考えられなかった。


何、この、お兄ちゃん。


かっこよすぎるんだ、け、ど、


「うん?お姉さん、ここで何をしているのかな。」


「ニャッ、ニニャーーン.....」


そういう、言葉にならない声しか出なかった。


「お姉さん、ここは今危ないかもしれないよ。」


果たしてそうかなあ。逃げていたのはあの女の人一人だけだったし。仮にその前に沢山の人が逃げていたにしても何か変だわ。確かにその前からも逃げていた人々はいたけれど。それでも何かおかしいよね。


その割には、何も起こってないでしょ。普通やばかったらそれなりのことが工場で起こっているはずだし、こういう一室が普通に稼働していること自体も何かおかしいというか。


「なるほどね。何か色々考えているみたいだね。お姉さん。そして、君の予測していることは多分、合ってるかなあ。」


うっ


このお兄さん、私の喉を撫でてきた


というか、考えているうちにいつの間にか抱っこされていたわ。


抱っこ。


これはなかなかにいいけどねえ。


お兄さん、何者なのかしら。


仮に工場が大変だとして、お兄さんはなぜ普通にこうして私たちと一緒にいたり、のんびりしたりしているのかしら。


「ふふ。それはね、ここの人たちをみんな、私が攫って閉じ込めているからだよ。」


エッ?!


さらって閉じ込めているって


それ、犯罪かしら


「ううん。悪いかもしれないけどそうではない。単に彼らを更生しているだけだよ。」


更生。単に、更生。


「うん。更生している。それだけ。良かったら見てみるかい。」


「ニャンッニャニャーンニャンッ」


ええっ。行くわ。


「うん。こちらだよ。」


お兄さんは私を抱っこしたまま一室にあるドアを開ける


すると長い廊下があり、そこを歩く。


途中で私の体をもふもふしているのを感じた。


なかなかに良かった。綺麗なお兄さんにふわふわされるのはいいのよ。


そうして着くと、さらにドアがあったので開ける。


そこには沢山の人々がベッドで眠っていた。気持ちよさそうに。


か、かわいいやん。


そんな、悪いことなんてしていないのかしら。


「していないよ。」


えっ、そうなの。


「うん。みんなを大切にして、更生させただけだよ。ほら、みんな俺のために頑張ってくれるのはいいけど、頑張りすぎだから少し無理にでも休ませようと思ったんだ。」


それでこうなことになっているのかい


みんな気持ちよさそうに


何で眠らせたのかな


「俺がなでた。」


お兄さんは得意げに笑っていた


な、なで、た、


それなら私も撫でてほしい


特にお腹や喉の辺りを


「もちろんさあ。君は撫でるよ。」


あっ


ふわふわもふもふされてしまった


これだとやがては眠くなってしまう


みんなは、うん。


よさそうだね。


それなら何で、みんなは逃げていたのかしら


「それはね、俺が来たからだろうね。」


え、ご主人様が来たからみんな逃げるものなのかい


「うん。そうだよ。だって俺は主様だからね。この世界の。」


そ、そう、だよね。


お兄さんは、やっぱり主様なのよね。


こんなにかっこいいのに、逃げるなんて変よねえ。


「ありがとう、お姉さん。まあ、突然俺が来たら驚くものなんだろうね。俺は世界で一番偉い人だからなあ。」


「ニャーーン....」


「そんなっ。気にしてくれてありがとうだけど、気にしなくていいんだよ。こうなることは、わかっていたから。今回、私はこの工場に来たのはみんなを休ませるためだったんだ。」


そういう善意だったのに、みんな逃げちゃって


「いいんだよ。にゃんこさん。分かってくれる子を休ませているよ。離れてしまった子達も家に帰って休んでいるといいなあ。」


こんな時でもご主人様は、優しいのね。


「そういってくれてありがとう。いいんだ。俺は世界のみんな、好きなんだ。」


ニャーーン....


「ふわふわしているな。癒しだな。」


主様が私の体をふわふわする。いい気分になる。いいよ。やっても。癒されるなら。


「癒されるよ。もう少し、こうさせておいておくれ。」


はい。どうぞ。


ふわふわされているいま


だんだん、眠くなってきたなあ


ねむい、、、


「お姉さん。」


返事がない


「お姉さん。」


返事がない


「眠ったかな。お疲れ様。よくお仕事頑張ったね。君は猫なのに。俺の世界の子だからかな。フッ。ふわふわ、いいな。癒し。連れ帰りたいくらいには愛らしいかな。いずれ、みんなが起きたら俺も帰るかな。この猫さんを連れて。」


それまでもうしばらくは、ここにいるか。


この工場は俺の消化を助けたり色々やってくれたりするところだ。


そうなところにこの猫さんが迷い込んでしまった。


申し訳ないことをしたかな


いいや。この猫さんは気ままな子だ。


ふわふわさせてくれるだけでありがたい。


おっ。指をちゅぱちゅぱしているな。愛らしいな。


猫を飼うと癒されるのだろうなあ。


私はお姉さんの頬に少しちゅっとした。


お姉さんは恥ずかしそうに照れて眠っている。


いいな。


そうしているとみんなが起きてきた


「-------はっ。ご主人様、おはようですー」


「ああ。おはよう。よく眠れたかい。」


「んむ。ふわふわしていて良い眠り心地でした。」


「それはよかったよ。お仕事をするためには、体を十分に休ませることも必要だからね。」


「確かに、そうですねっ。」


その子は笑った


「これからご飯でも作るかい」


「えっ、ご主人様じきじきすか、いや、いいすよ。自分で作ります。」


「ふうん。」


「んー。まあお腹空いているので、ご主人様、お願いします。」


「うん。いま作るね。」


俺は彼にご飯を作る


卵を焼いたりお米を炊いたりパンを焼いたり、色々する。


そうして彼の前に出す


「待ち望んでいた。いただきます。」


「君は食べるのもせっかちな傾向があるからゆっくりね。」


「うーん。」


彼は俺の作ったご飯を食べる。


その姿も愛らしい。


さすが我が下部。


毎日を、俺のために働いて


それはいいんだが


働き過ぎは困る


ゆっくり休むことも習慣にするのだ


その食べている姿も愛らしい。


これからまた俺のために働きに行く


愛おしい


そうして見ていると彼が食べ終わった


「ごちそうさまでした。」


「はーい。お粗末様でした。」


きちんとしているいいこだ。


他の子達も続々にご飯を食べ終え、仕事は戻っていく


それの時に向こうから「ご主人様帰ってくれた、あぁー良かった。かっこよすぎて死んじゃうからさあ、逃げたのよね」「帰ってこれたあ、あー安心」「どうなることかと思ったわ」


と聞こえた。


気にしていないがそれでいいのかと思う


私はこれで、今回の役目を終えたね。


さて。帰るかな。


ここの部屋も片付けておくか。


部屋をしまうと同時に音がなる。


ーーワギャワギャワギャ!ーー


どうしてこの様な音になるのか。


ここの人が俺がここに来る時に設定する効果音なのだ。やり過ぎだと思うが、俺が来ることに対して驚くのでこの様な効果音にして知らせる様にしているのだろう。


退出する時もこの様な音が鳴る。


この猫ちゃんを後でもふる。


部屋を片付け、自分の部屋へ戻った。


そうしてベッドの上に寝転がり、手にしていた猫ちゃんをふわふわする。


ふわふわ。


寝顔がかわいいな、ねこは。


その猫は色が全身がピンクだ。


それもまた珍しい。


何だか女の子らしくていいよな。


ふわふわ。


猫もベッドの上に寝かせている


もふもふ。


そうしているうちにお姉さんが起きた


「ンッ ニャーーーン...」


愛らしかった。その鳴き声も。


「起きたかい。姉さん。」


「んっ、ここは」


「ここはね、俺の自室だよ。」


「えっ、ご主人様の」


「そうだよ。俺はお姉さんを貰って帰ってきたんだ。」


「えっ、そうなの」


「うん。愛らしかった。」


「ニャ...!」


「その顔は、喜んでいるね。」


姉さんの頭を撫でた


「ところで、姉さんの名前は何ていうんだい」


「あたし、名前ないの。ネコっていう種族なだけしか分からないの。」


「なるほど。それなら俺がつけよう。猫美(ネコミ)という名前はどうだろう。」


「ネコミ。悪くはないね。名前にネコって入ってるじゃん。」


「そうだよ。猫さんだし、猫という文字が入っている方がいいかなと思ったよ。美という字を付けたのは、毛の色もピンクで愛らしいし、愛美(マナミ)と迷ったけどね。」


「うーん。どちらでもいいわよ。お兄さんがくれたお名前ならなんでも。」


「そうかい。猫美さん。」


猫美の頭を撫でる


気持ちよさそうにゴロゴロする


「これから、ここで暮らすといいよ。猫美さん。」


「ニャンニャンッ」


そうして猫美さんは俺の部屋で暮らすことになった。


ふわふわな愛らしさがいるようになった。

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