2

おれは9歳のこども。とある学舎へ通っている。今日も学校だ。とある事に、みんながおれを見る。「今日もパッとしないね」と見られていることを知っている。


クラスに入り、席に着く。


その中で一番目立っているのがあの子


主様。


同い年なのにすげー身長がデカくて顔もかっこよくて何でも出来て優しくて、羨ましいけどおれじゃあ敵うわけ無いから何も見なかったことにしている。


主様もおれに何の興味も無いだろうな


先生が入ってきた


先生も主様に見惚れている。すげー破壊力だ。


そもそも何で「主様」という名前なのかを理解できる人はそんなにいなさそう。おれは知っている。


あーー、今日はこれから運動の授業かなあーー。あんまりやりたくないなあー。


だって


「きゃあああ!主様、かっこいい....!」

「身体大人っぽいねえ〜!」

「お腹に怪獣くっつけてるみたいでかっこいいねっ!」


こういう女子の声が聞こえてくるから。


まあ、だからと言っておれがどう言われるとかそんな訳じゃあないんだけど


何かしっくりこない


何で世の中にはああいう子がいて、おれみたいな地味でしかないような感じのがいるんだ


主様みたいにかっこよかったらおれもちがっていたのになあ


そう思っていると、クラスの子から声をかけられた


「ねえ君、あの子のことをずっと見ているよね?あの子の事、何か気になるの?」


おれ「そりゃあ気にならない訳ないだろ。あんだけ目立っていたらさ」


「まあ、確かになあ。主様、ちょうかっこいいしなあ。とは言ってもだよ、主様自身も特にそれで自分を立たせるというわけでもなさそうだよ。本当に優しい子だと思うよ。」


そういう感じだよね。でもなんかなーー、あの子は正直揃い過ぎなんだよな。そんな子がいるならおれたちみたいな子は何でって思う


「----君が何を考えているのかはよく分かるよ。でもね、あの子は良い子だから、それを知ったら多少は見方が変わると思うよ。」


おれ「そうだといいな〜〜」


そう言っておれは運動の授業を何気に受けた


その中でもあの子はかっこよかった


大人っぽくて足長くてキリッとしていて真面目で顔いいくて


何だか、おれが惨めに見えてきた


何か、疲れた


あの子の言うとうりに、あの子って真面目で良い子なのかなあ


何だか、分からなくなってきた


おれの考え方がお子ちゃま過ぎるのかなあ


まあ俺まだ9歳だし


もんだいは、あるか。このままじゃあ気分が悪い。ちょっとあの子のことを信用してみるかな?


これから化学の勉強時間だ


あの子は


うわっ、今日は寄りにもよってあの子の近くの席か


しんどいなあ


「俺は、〜〜は〜〜だと思います。」


「はいっ!正解です主様!」


同時に場に歓声が湧き上がった


女の子もさわいでる


おれは何だか気持ちがいたたまれない。こういうこともできるんだもんなあ


何だか、考える気にもならなくなったな


化学の時間はその後も続いた


終わって


主様、主様、主様、主様


んっ?


あ、悪い。考え事をして人にぶつかったみたいだ



主様。


「君、ずっと俺のことを見ていたよね。どうかしたのかい?俺、何か変だったかい」


おれ「いやいやいやいやいや何でもないよ。ただちょっと、色々出来て良いなあーって考えていただけだったから。単なるうらやましいさ。」


「そういうことか。俺は俺なだけだよ。」


おれはおれなだけ、ね。けっきょくさあ、おれの気持ちは分からないんじゃないの


「君は君にしかない魅力があるのを知らないかな。分からないか」


え?俺にしかない魅力?何だそれ


「その顔、やっぱり分かってないんだな。君はな、優しいんだ。優しくて、かっこいいんだ。」


おれ「それ、きみじゃーん」


「いいや。君のことでもあるのさ。よく分からなさそうだから、俺が教えてあげる。」


おれ「え」


主様はおれのおでこに手を当てた


するとおれの体験したことのない色んな映像がながれこんできた。何だこれ


主様「君は自己陶酔し過ぎ」


「じこ?と うすい」


主様「自分のことをかっこいいって思い過ぎってこと。」


「え、おれが?」


主様「そうだよ。俺はそんなになれない」


「それは君じゃないか、主様。」


主様「俺じゃあないさ。俺、そんなに考えられる程のエネルギー無いから。」


「なんか、おれ褒められてるのか。主様もおれにたいして羨ましいと思うところがあるのか」


主様「いいや。悪いけどそういう意味じゃない。君は悪い方向にそれが行き過ぎているんだ。少しはそういうところをどうかした方がいい。」


「悪いほうこうって」


主様「それで君は君を自己卑下をし過ぎてしまっている」


「じこ、ひげ」


主様「自分のことをダメだと思い込むこと。それが君はひどいから、俺と一緒にやっていこう。」


「主様と、一緒に」


主様「そうだよ。何かあったら相談に乗るし、分からないところがあったら教えてあげる。遊びの相手にもなるよ。」


「ええ、そしたらおれは君のきらきらに倒されて何も自分の魅力が分からなくなっちゃうよ」


主様「そうでもないさ。俺が君の魅力を教えるために一緒になるんだ。期待していていい。」


「そうかあ。何だか、主様ってそこまで悪いのではないのかな」


主様「そうか。俺は、君にとって悪い者だと認識されていた訳か。」


「あ、あ、うん そうだよ。単なる羨ましさだけどさ」


主様「うん。良くなっていくから安心して」


「おうよ、なんか楽しみだな。ごめん、なんか、君のことを悪く思っていて。」


主様「気にしなくていい。俺も君の事が好きだよ。」


「えっ。おれのこと好きなのか?」


主様「うん。だって君は俺の----」


先生「あっ。二人とも、そろそろ休憩時間が終わるよ。クラスに入っておいで〜。」


主様「今いくね」


「今いきまーす」


そうしてその後も勉強が続いた。相変わらず主様は色々目立っていたけど、何だかあんまりいやみな感じはしなかった


帰り


後ろから誰かが来た


「おーい。君、主様と話していたよね」


おれ「うん。話したよ。何か変かい」


「いや。変じゃない。寧ろ良かったじゃん。」


おれ「うん。良かった。何でそれを知っているの」


「さっきの勉強時間だよ。君が主様に対して穏やかな目で見ていたからさ。ああそういう事なんだなって」


おれ「ああそうだよ。よく分かったね。」


「今もやさしい目をしているよ。何かいいな。」


おれ「確かに。こころ穏やかでいたら何も気分悪くないよ。生きる事が幸せ。」


「だよね?そんな感じだよ、今の君。」


そうか。いまのおれはそんなふうになっているのか。いいことだね。


主様に対して何だかいい感情が湧いてきたなあ


主様の家も遊びに行ってみたいなあ


家?


そういえば主様の家ってどういったところなんだろう。見たことないんだよなあ。他の子のいえはみんな何気に見たことあるのに、あの子のだけ無いんだ


気になるな。そのお父さんお母さんも見たことないんだ


そういえば謎といえば主様は少し前に何か言っていなかったか


ーーだって君は、俺のーー


で言いかけて先生が来ちゃった終わったんだ


この次、何て言おうとしていたのだろう?


おれは、主様の何かな


そもそも、何で主様って「主様」って名前なんだろう


それってまるで、天皇さまみたいというか


何か特別な人でなければならないから、何か、何だかひっかかる


探ってみようかなあ


でもどうやってかな、もっと仲良くなってかな、もっと仲良く、そう考えると少し怖い様な気もしてきた。主様って、何だろう。僕で分かるかな。考えてもしかたがないかな。お家帰って遊ぼう。


お家


両親がいた。みんなおかえり。お勉強やってからお母さんのところへ行こう。


うーん。今回のお勉強もおれには難しかったからキツイなー。あの子ならすぐに解いちゃうんだろうなあ。そうとなったら、早く終わらせて遊ぼう。そうしておれは間違っているであろうながらも勉強をやって身体を綺麗にして身体を伸ばしてナマケモノごっこをしてお母さんのところへ行って、ご飯を食べて、犬を触って、飲み物を持って部屋に戻った。


主様かあ。ずっとそれが気がかりだった


主様とは何者だろう。何だか遠くの存在に見えるのだけど


「よっ。ボーイ。」


誰だ?知らない何かが家にいるよ。今目の前にいるこれ、何。姿は犬みたいだ。


犬「あーあ。そうやってワンのことを忘れるんだね。今までずっと家族として君の元に居たのにー。」


「え?」


よく見ればこの犬、うちのペットの犬の蔵(クラ)と模様や大きさや顔立ちが似てる。


「蔵なの?」


犬「そうだよ。困っちゃうね。このワンを忘れるなんてさ。いつもモフモフしているくせに。」


「蔵、ごめんね。可愛いね。何で急に空を飛んで喋れるようになっているのかが分からないけど。」


犬「それはね、君がワンのことをしっかり見ていなかったからだよ。それだけだよ。」


「ええ、見ていたと思うんだけどなあ。毎日モフモフたくさんしたりしたし。」


犬「ワンがお外に自分でお散歩をしに行った時まで見ていたかい?」


「いいや。そこまでは見ていないよ。子供は勝手に外でちゃダメなんだって言われてるから。」


犬「そうでしょ?それだからワンの姿をよく見ていなかったんだね。」


「そういうことだったの?ごめんね。もっとよく見ているべきだった。」


犬「仕方ないさその辺は。まあそれより、君はあの子のことを知りたいんでしょ?」


「主様。うん。知りたい。」


犬「教えてあげるよ。僕の手をとって。」


犬は手を差し出してきた


手を取った


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「え?!景色が変わった。家の中じゃない。ここは、どこ?綺麗なお部屋。色々あって豪華だ。」


犬「ここは記憶の空間だよ。体は家の中だよ。意識があの子の記憶の中に飛んでいるんだ。」


「意識が ここって主様の記憶なの?」


犬「うん。そうだよ。これから彼がどのような者なのかを知るといい。」


「どういう感じの人なんだろう」


犬「楽しみだねー。」


「って、今見ているこの景色、主様の身体からの観点か?」


犬「うん。そうだよ。色んなことが知れて良いと思う。」


「えっと、わっ。歩いたら主様が歩いた。これまるでおれが歩いてるみたいだな。」


犬「良かったね。イケメンになれて。」


「くうそうじょうでしょ。」


おれは主様の体で歩いた。やっぱ主様視点は高いから世界が小さく見えるな。同い年の子供なのに何でだろうな。大人っぽい。


「ところで、どこへ行けば良いんだ」


犬「どこでも良いよー。」


「えっ?じゃあ、お外とか出ても良いの?」


犬「良いよー。色々探索してみたら面白いかもよ。」


「ラッキーかな。」


そうしておれは主様の体で色々探索をしてみることにした。トイレ、音楽室、動物いるところ、お店、物作りなところ、ドアを開けてお外へ


そこで疑問がよぎった


「ねえ蔵。あのさ、ここって主様の経験上の世界なんだよね?」


犬「そうだよー。彼が経験をした世界そのものをリアリティに再現しているよ。」


「その割にはなんか、変じゃないかい」


犬「あ、どの辺がっっっ?」


「世界がだよ、トイレの雰囲気も、お店の名前も、音楽も、動物も、みんなおかしいんだよ。」


蔵は表情を満面に笑みをだした


犬「へへ。わかったんだね。それが彼を知るヒントだよ。」


「え、これが。何だろう」


犬「.....何がどう、違うかな」


「なんというか、具体的にはいえないのだけれど、確実に違うんだ。全てが。」


犬「フフフフフフ!!いいねえ。分かってきてるねえ。」


「え?これが主様となんの関係が」


そういえば、店の名前が確実におかしい。例えば元の世界の「鎧とお血血わんぎャ」という名前の果物専門店も無い様な感じだ。そういうのは「ラッキースコール」とか「レダチェリー」みたいな感じの変にキラキラした感じのネーミングしかない。それが悪いとは思わないけど。


そして、中から何か湧き上がってくるこの感情は「優しさ」だ。自分の事を知りたいという。自分は元々完璧だから自分を知る為の努力も惜しまない。精神の在り方を突き止める為の努力。それを知り尽くすのが生きる目的。その為になら自分をとっても追い込むのは、ある意味趣味でもあり、楽しさでもあるんだ。だから主様は根っからの性質、努力家でいられて幸せなんだ。だから主様は優しくあれる。苦労をしたことない訳なんて当然無い。してる。してるけど、それが逆に楽しいと感じるほど優しいんだ。だから主様は、幸せ者だ。


犬「何か思っているみたいだね。」


「うん。あのさ、ここってさ、主様のみていた世界なんだよね?」


犬「そうだよーん。その顔、何となくあの子が何なのかを分かってきたようだね。」


「分かっちゃったかも、しれない」


何となく分かる。ここまで世界観が異なるのだけど、確実に主様が見ていた世界なんだ。という事は、決まっているんだ。


犬「じゃっ、ここでクイズでーすっ。ここは一体、どういった世界なのでしょーうっ」


「ここは」


「ここは」


犬「うん。さあ、答えてごらん。」


多分という推測だ。間違っているかもしれないけど、多分これで合ってる。


「ここは」


「ここは」


犬「うん。」


「ここは........」


「ここは、主様が自分の「目」から見ている世界で、おれたちがいる世界は主様の身体の中なんだな?」


犬はニヤニヤを満面の笑みにさせる


犬「大っせーーーいかーーい!!おめでとう!さすがだねっ」


やっぱりそうだったんだ。ここは主様の「目」から見ている世界で、俺たちの世界が主様の体の中だったんだ。そして主様の名前が主様なのもそれが理由だ。でも本当の名前がありそうだよね。


そして、主様があの時言おうとしていた言葉


「だって君は俺の----」


は、多分こうだ。


「だって君は俺の大切な細胞であり、生きている命なのだから。」


主様は命自体も大切にするんだ。だから俺達が細胞だから大切にしたい、好きなんだという訳だけでは到底なさそうだ。主様はそもそも命自体を大切にする性質なんだ。それが一番な理由なのかもしれない。


何となく、安堵の気持ちや恵まれた気持ちになった。主様が完璧なのも全てはこれなんだ。


そして、気になることがある。

やたらと世界が綺麗なんだ。家具も。これは一体どういう事か


少し考えてみたらとんでもない考えに行き着いた。まさか。


「なあ蔵。あのさ、主様ってここの自分の「目」で見ている世界でも割と上の地位にいそうだよね。世界の雰囲気からして。もしかして主様って」


「もしかして主様って、ここの世界で身分が国王様という立場だったりして」


犬「ハハハハハハハハ!!」


犬は爆笑をした


犬「そうだよーん!この子はね、国の王様なの。」


「ああやっぱりか。どうりであちこち豪華だったり世界の雰囲気的にそうかなっ思ってみていたんだ。そういう事か、とすると、うわっ」


おれは身震いがした。背筋が凍った。


「おれ、そんな偉い人に対して普通に話しちゃってた」


犬「それの何がいけないの?いいじゃん。仲良しさんなんだから。」


「そうなものかなーー」


犬「うん。そういうものなんだよー」


「おれとしてはなんだか緊張しそうだなあ。」


犬「いいと思うよ。緊張しちゃおうよ。たくさんそうして、飽きて仲良くなろう。」


「あ、いいねえそれ。その際は、君のモフモフの心強さが欲しいな。」


犬「ぼくのモフモフ?いいよ。好きなだけ触るといいよ。」


「あーー、ふわふわふわふわがあるといいなやっぱ。うん。これで勇気が出たよ。これで主様と接せられる。」


犬「良かったよーー。それじゃあ、そろそろ帰ろうね。というか、意識を戻そうね。」


「おうよ!」


そう言って二人?は帰ってきた


「あーー楽しかったーー、てか怖かったな少し」


犬「えー?怖いって、どの辺が〜」


「見えていた景色とかいろいろ。怖すぎて変になるかと思った。おれが主様になっちゃうし。」


犬「それもまた、楽しかったでしょ〜」


「ある意味ではね。やっぱり主様って嫌なヤツじゃなかったな。性格優しいよね。だって主様になりきっている時、その中の優しさや真面目さみたいなものを感じたもん。」


犬「うん。優しいよ。そうだよね?やっぱり感じるよね?そういうの。」


「うん。これも本人になりきると分かるみたいなものなのかな」


犬「そうだよ。ずっと気になっていた悩みが分かって良かったじゃん。」


「うん。何か、おれ悪かったなあ。主様のこともよく知らないで。」


犬「分かっていいじゃん。そろそろ夜も夜だし、寝ようかあ。ぼくもあっちのお部屋で寝るね。」


「うん。今日はありがとう、蔵。おやすみ。」


犬「おやっみ〜」


にしても、主様、よくやったねえ。ちゃんとあの子に教える為の手法が効いたよ。


犬はその思いを祈って確実に伝えた


主様「そうなんだね。ちゃんと分かってくれたみたいで良かったよ。」


犬「ワンッ!あの子はもう主様をイヤミだとは思ってないよ。」


主様「蔵、本当に、本当に、とてもありがとう。俺も、そろそろ寝ようかな。」


犬「いいねえ。良かったね。安心して学舎行ってね。それじゃあ、お休み。仟夛朗くん。」


「あぁ、お休み。蔵。」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


そうだ。俺は主だ。ここの世界の主なんだ。俺は命という存在自体はそもそも好きなんだけど、この世界も学舎のみんなも俺の細胞たち。とても愛おしい。愛が尽きない。だから、誤解をされている様だったら直ぐに解いてしまいたかったんだ。それをあの子の家の飼い犬である蔵に頼んだんだ。俺の思いで蔵は異形な犬にした。あの子と分かり合う為に。結果は思うとうりに伝わってくれて良かったと思う。有難う、蔵。

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