メインストーリー

第1話 店主と傭兵と異世界召喚…?①

 世界を二分する巨大国家、ベルトルク王国。その首都たるベルトリンデルでは、今まさに、勇者を呼ぶ儀式を行っていた。異世界「ニホン」から呼び出されたホウショウ・カケルは、王家の期待を背負う勇者は、幾多の苦難を踏破し、それに応えたのだった…。

 が、今回のお話における主人公は、彼ではない。王国首都に店を構える店主デニスという冴えない男こそが、今作の主人公である。

 成人を機に独立し、体一つで王都に旗揚げ。そんな一市民から見た、勇者の成り上がり物語とは…。



             ☆



 ベルトリンデルの王都表通りは、ギルドや商店、食事処が軒を連ねる王都の中心街だ。そんな表通り沿いに建つ王立ギルド本部の角を一つ入った小道。そこに、とある雑貨屋が店を構えていた。

 店の名前は、『デニス雑貨商』。王都に店を開いて、四捨五入すれば十年になる、それなりに歴史のある店だ。店の成り立ちはもう少し複雑なのだが、それは、また別の機会に触れることにしよう。



             ☆



 薄暗い小道に、とある店が開いている。店の窓からは、僅かながら中の様子をうかがことができた。縦長の店の中央にはテーブルがあり、それを挟むように左右の壁には背の高い棚が置かれている。

 雑貨屋とは言うものの、取り扱っている商品は筆記用具に宝飾品、果てはちょっとした武器まで置いているようだ。

 そんな店の店主は、店の奥、カウンターに腰かけている。濃いブロンドの髪を短くまとめた、善良そうな顔立ちの男だ。中肉中背の体を地味ながらも清潔感のある服で包んでいる。

 とにかく、この物語は、そんな冴えない雑貨屋の店主と共に始まる。



「デニス、いるか?」


 広くはない店に、野太い男性の声が響いた。時刻は夕刻。店には既に、西日が差し込み始めていた。


「はいはい、居りますよ」


 返事をしつつ声の方に目をやると、物騒な鎧を着こんだ巨漢が店に入ってくるところだった。


「やあ、ゴルドン。予約の品ですか?」


「ああ、届いたって聞いたんでな」


 私がゴルドンと呼んだ男は、店内をキョロキョロと物色しつつカウンターまで進んできた。

 ゴルドン・トリアス。彼は王立傭兵ギルドに所属する傭兵で、私の店を古くから利用してくれている客の1人だ。傭兵らしく体は日に焼けており、スキンヘッドが輝いている。


「相変わらず客が入ってないな。やっぱりあの看板の文句が良くねぇよ。『王都表通り、ギルド横』って、横じゃねぇよな。一本入った裏路地じゃねぇか」


 彼は、カウンター横の椅子に腰掛けつつ、益体の無いことを言ってくる。というか、うちの店の常連は大体こう言ってくる。


「ダメです。あの文言は先代からの伝統ですから。まあ確かに…あの内容では、ギルド横の別の雑貨屋に客を案内しているようなものですが…」


「じゃあダメじゃねぇか」


「大丈夫です。日々の宣伝がいずれ実を結ぶはずですから」


 適当に返しつつ、背後の棚から木箱を取り出す。中には左肩用の鎧が入っていた。特殊な金属で作られたこの鎧は、丈夫な割に精緻な加工がしやすいと言う特徴を持っている。当然値段は張るが、武骨な鎧に個性が出せると言うことで、一部の層から熱い支持を受けているのだ。幸運にも、その製作元と縁があった私は、こうして注文を取り次ぐことで、利益を得ているという訳だ。


「さて、注文された通り、所属している『戦狼の牙』のシンボルマークと、現ギルドランク、そして貴方の名前を彫りこんでいただきました。確認してください」


 そう言って、私は木箱をカウンターに載せた。


「じゃ、さっそく」


 ゴルドンは待ちきれない、とばかりに中の鎧を取り出し見分し始める。

 鎧には、注文通りの内容が刻まれていた。どれも非常に精緻な造形をしており、その用途を知らない者が見たら、美術品と見紛うこともあるかもしれない。

 ゴルドンも同様の感慨を得たのだろう。様々な角度から眺めては、その度に歓声を上げている。


「うーん、いつもながらさすがの出来だ。これがこのしけた店主から出てくるってんだから信じらんねぇ」


「いらないなら送り返しますよ?」


 いつものことながら、この客は言いたい放題だ。まあ、私の店の客はだいたいこんな態度なのだが。


「そうだ、デニス。実はここに来る前ギルドに寄ってたんだが、そこでひと騒ぎあったんだよ」


「ああ、それならここまで聞こえていましたよ。けっこうな人が店の前を通っていきましたからね。店を空けるわけにはいかなかったので、私は見に行けませんでしたが」


「そいつはもったいないことをしたな。あんなのは恐らく二度とお目にかかれないぞ」


 ゴルドンは至極残念そうな、それでいて意地の悪い視線を私に向けてくる。そこまで言われると、気になってしまうのが、人情というものだろう。


「もったいぶってないで、何があったのか教えてくださいよ」


「お、食いついたじゃねえか。もちろん教えてやるよ。ほら、耳貸せ」


 人目をはばかるような内容なのか。だが、ここまで来て真相を確かめない、という選択肢は無い。私はカウンターへと身を乗り出した。


「ギルドの魔力適性を見る水晶、あれが爆発したんだよ。変な格好をした、青っ白いガキがちょっと触れただけでな」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

はじめまして、たもんと申します。


 第一話を読んでいただいて、ありがとうございました。

 これからも投稿続けていきますので、プラス、マイナスの感想はもちろん、特にダメ出しなどをどしどし募集しております。

 よろしくお願いいたしますm(_ _)m

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