第4話 いや、完全に年末ジャンボ宝くじじゃねーか!?
弦人は指で額を押さえながら、真島が伝説の勇者の剣を持っているところを想像した。
ないわー......
アイツはイメージ的にバタフライナイフかトカレフだろー......
「一番、伝説の剣持ってちゃいけないヤツの手に渡ったちまったナー ......」
霧島は弦人の意見にうんうんと相づちをうった。
「全くその通りだよ。アイツが剣を手に入れて、いったい何をしたと思う?」
弦人は真島のにたーっとした笑顔が頭に浮かび、いやな予感しかしなかった。
「私たちがヤツが剣を手に入れたと知ったのはヤツからの手紙だった。ヤツは召喚者全員に手紙をよこしたんだよ」
霧島は真島からの手紙の概要を弦人に語って聞かせた。
親愛なる同胞諸君
魔王打倒に向けて、日々研鑽を積んでいる諸君らに朗報だ。
諸君らが血眼になって探しているだろう“伝説の勇者の剣”を俺は手に入れた。
だが、残念なことに俺は“伝説の勇者の剣”を使うにふさわしい器ではない。
そこで、この剣を持つにふさわしい真の勇者にお譲りしようと思う。
では、誰がふわしいのか?
これまた困ったことに俺はそれを見極める目も持ち合わせていない。
だから、俺は全てを“運命の女神”に託すことにした。
我こそはと思う者は名乗り出てくれ。
“運命の女神”に選ばれた者が“伝説の勇者の剣”を手にすることとなる。
各地の主要都市に俺の代理人を配置した。
参加する者は代理人から参加券を購入してくれ。
ちなみに参加券は一人何枚購入しても構わない。
審判の日は12月31日だ。
諸君らの参加を待っている。
真島妖一
「“伝説の勇者の剣”は持つ者に凄まじい力を与えると言われている。手紙を読んだ召喚者はみな半信半疑ながらもこの話に飛びついた。私たちもヤツの代理人から参加券を購入した。その参加券にはそれぞれ7桁の番号が印字されていた」
霧島の話を聞きながら弦人は思った。
なんかだんだんオチが読めてきたぞ......
霧島は話を続けた。
「12月31日、私たちは参加券に記載されていた場所に集まった。そこはこの世界の貴族が出入りする歌劇場だった。歌劇場の舞台には7つの風車盤が用意されていた。そして、真島は回転する風車盤に一本ずつ矢を放った。矢が当たった7桁の番号と参加券の番号が一致した者が“伝説の勇者の剣”を手にできるというルールだったんだ」
「いや、完全に年末ジャンボ宝くじじゃねーカ!?“伝説の勇者の剣”で年末ジャンボ宝くじすんなヨ!!」
弦人は予想が的中し、力の限り突っ込んだ。
「7桁ということは当たる可能性は100万分の1だ。出回っていた参加券はせいぜい1万枚。可能性は0ではなかったが、当選者は出なかった」
「それで、参加者は収まりがつくわけないよナ?」
「ああ。無論暴動が起きた。全員で真島を拘束して剣の隠し場所を吐かせようとしたが、魔法かスキルか、どういう手を使ったのかわからないが、真島は煙のように消えてしまった。“それじゃあ、諸君、また来年”という言葉を残してな」
弦人はその“また来年”という言葉を聞いて思った。
アイツ、もしかして年末毎年やる気か......
毎年年末に開催される“年末ジャンボ伝説の勇者の剣くじ”。
弦人はそんな宝くじのCMを想像してしまい、心の底からシュールさを感じた。
弦人の想像をよそに、霧島は話を続けた。
「それ以来、召喚者全員が真島を血眼になって追いかけ回しているが、真島はいつも煙のように消えてしまって、誰も捕まえられていない」
なるほど......
アイツらしいと言えばアイツらしいか......
訳のわからんルールのゲームを仕立て上げて、他人をおちょくって、自分はスリルを愉しむ......
だんだんアイツの行動パターン読めてきたなー......
わかりたくもねーけど......
あれ、でも......
そこで弦人はある可能性に気付いた。
「真島は本当に“伝説の勇者の剣”を持っているのカ?アイツのゲームに誘い込むための法螺話だって可能性も......」
「無論その可能性もある。だが、私たちがヤツの話を無視できなかった理由があるんだよ」
「理由?」
霧島は口にするのも恐ろしいといった様子で、途切れ途切れにその内容を話した。
「手紙が送られてきた数日前......
ある町が忽然と消えたんだよ......
町があった場所はキレイにまっ平になってた......
まるで......
巨大な剣で町の根本から切り飛ばしたみたいにな......」
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