第31話 もしそうだとしたら、俺を召喚した神様はめちゃめちゃ性格悪いか、そうでなかったら相当のアホだ!!

「うーん、マジかー」


 事の顛末を聞き終わったあと、真島はそう唸った。


「“レベル0”恐るべしだな...」


 真島はため息をつきながら、そう言った。


 ん......あれ......


 真島の言葉で、弦人は大事なことがうやむやになっていたことに気付いた。


「メチャクチャ今更ダケド、俺以外ノ召喚者モ“レベル0”カラスタートシタノカ?」


 そう、もし他の召喚者たちもレベル0からスタートしたならば、同じようにレベルが上がらないか、上がったとしても相当苦労しているはず。

 だが、神殿での同期たちの様子を思い返すとそうは思えない。


「いや、レベル1がスタートだ。“レベル0”なんて聞いたこともねー」


 やっぱりか...


 弦人は、神託後に同期たちから浴びせられた野次を思い出した。


『1じゃなくて0かよー!?』


 あれは、まだ0なのかという意味じゃなくて、0という数字自体に驚いていたのか...


「ナンデ、俺ダケ0カラスタートシタンダ?」


 弦人は天を仰ぎながら恨めしげにそう呟いた。


「さーな...なんか心当たりねーのか?飛ばされるときに神様と会ってなんか取引したとか...」


「イヤ、心当タリナンテナニモ......ア.......」


 弦人はそこで飛ばされる前に自分が発した言葉を思い出した。


『あー、ゼロからやり直してー』


 まさか......


 あれか......


 思い浮かんだその考えに、弦人の顔は青ざめていく。


「どーした?」


 そんな弦人に真島が怪訝な顔をして問いかける。


「イヤ、サスガニソレハナイ!!」


 弦人はそう言って、浮かんだ考えを振り払うように頭を左右に振った。


 それはない......

 それはないと願いたい......

 もしそうだとしたら、俺を召喚した神様はめちゃめちゃ性格悪いか、そうでなかったら相当のアホだ!!


「なんか思い出したのか?」


 真島はそう言ってうつむく弦人の顔を覗き込んだ。


「イヤ、ナンデモナイ!!タダノ思イ過ゴシダ!!気ニシナイデクレ!!」


 弦人はそう言ってこの話題を切り上げ、食事を口にかき込んだ。


「トニカク今ハ、ナントシテモレベルヲ上ゲル方法ヲ見ツケ出スシカナイ!!」


 弦人はそう言って、席を立った。


「あー、待て。実はもう一つ用件があったんだ」


 早々にスライムの森に向かおうとする弦人を、真島がそう言って呼び止めた。


「憎たらしいから、あんまり渡したくなかったんだが...」


 真島はそう言いながら、懐から一通の封筒を取り出した。

 封筒は茶色い横長のダイヤモンド貼りで、赤い封蝋がされていた。


「ナンダ、ソレ?」


 真島め、また何か余計なことを仕掛けるつもりかと、弦人は警戒する。


 そんな弦人をよそに、真島は封筒をピラピラはためかせ、ニヤニヤしながらこう言った。


「“白銀の魔女”フレアちゃんからのラブレター♪」

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