第30話 って、なんでお前がここにいるんだよ!?
「ゲント、おきろ!!」
馬小屋で寝ている弦人の耳にそんな声が大音量で響いた。
昨夜、弦人はスライムの森で力尽きたあと、スチュアート家の馬小屋に泊まらせてもらったのだった。
そして、夜が明け、元気のあり余っているメアリが弦人を起こしに来たのだ。
うるせーな...
弦人はメアリの声でしぶしぶ起きようとするが...
「イッテ!!」
全身に激痛が走った。
痛みは、筋肉痛だった。
無理もない。
まだ慣れていない重い剣を何千回と振りましたのだ。
腕はもちろん、背中、腰、足と、全身のいたるところが悲鳴をあげている。
これ...今日...何もできねーぞ...
昨日半日かけて何の成果もえられず、体に過度の負担だけ蓄積してしまった。
何か方法考えねーと、時間と労力だけが湯水のように消えてくなー...
弦人はなんとか立ち上がり、メアリに連れられて馬小屋を出た。
「ゲント、おこしてきたー!!」
メアリは母屋に入るやいなやそう言った。
「おう、おせーぞ、相馬」
一足先に食卓についている真島がそう言った。
「ウルセ、コチトラ昨日何千回モ剣振リ回シテ、体ガボロボロナンダヨ」
弦人はそう言いながら、真島の前に座った。
食卓にはもう4人分の朝食が準備されていた。
弦人とメアリが来たことに気づき、ジェームズも台所から出てきて食卓についた。
「じゃあ、いっただきま~す♪」
そう言って、無遠慮に真っ先に食事に手をつけたのは真島だった。
「オ前、遠慮ガネーナ」
弦人も遅れて食事に手をつけながらそう言った。
「俺らみたいな流れ者にとってこういう食卓で食べる食事は大のご馳走なんだよ。人より先に手が伸びるのも仕方ねーだろ」
「ソレハ、ワカル。保存食ノ乾パントカマジ消シゴムミテーダヨナー」
「ほんと、ほんと」
「ハハハハハハハハ」
「はははははははは」
「ッテ、ナンデオ前ガココニイルンダヨッ!?」
和やかな空気を切り裂いて、弦人は全力でつっこんだ。
「お前、ノリツッコミにしても、間、長すぎ。このまま放置されたらどうしようかとちょっと不安だったわ」
真島はそう心中を吐露した。
「スマン、ソレハチョット悪カッタ。イヤ、ソレハ置イトイテ、ダカラナンデイルンダヨ!?」
「いや〜、ただの様子見だよ。もう、レベル2ぐらいには上がったかな〜と思ってな」
真島の言葉に、弦人は渋い顔をして黙り込んだ。
「なんだ?まだ1なのか?」
「0ダヨ」
真島の問いに弦人は小声でそう答えた。
「え?なんだって?」
声が小さすぎて聞き取れなかったため、真島は聞き返した。
「0ダヨッ!!俺ノレベルハ0ノママナンダヨッ!!」
弦人は今度は大声でそう答えた。
そして、昨日の顛末を真島に話したのだった。
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