第21話 いやーーーっ、この人、やっぱめちゃめちゃコワいよーーーっ!!

 弦人は考え込んだ。


 うーん、やっぱりエングリス語は難しい......

 相手の言ってる意味がわからない......

 単語の記憶間違いか......

 文法解釈の間違いか......

 あ、リスニング(聞き取り)間違いって線もあるか......


 弦人は真島の言葉を反芻し、その意味を解読しようとする。


「俺ト組マナイカ......俺ト組マナイカ......俺ト組マナイカ......ッテ、エエエエエエェェェェェェッ!?」


 やはりどう考えてもそういう意味だった。

 しかし意味は理解できるが意図が理解できない。


「ワケがわかんねーってツラだな。まあ、しょうがねーか。わかるよーに説明してやるよ」


 真島は仕方ねーなという顔をしながら語り始めた。


「お前が死ぬ方に賭けたヤツはざっくり90人強いる。そして、俺の“運命のルーレット”の掛金と配当の授受は口約束だ。固有スキルの強制力で踏み倒しはできないが、見せ金も証拠金も設定してない。ゆえに今現在の所持金を大幅に越えてベットすることも可能だ。だから、何人かアホみてーな大金をかけやがった。まあ、相手が“レベル0”なら瞬殺だと思ったんだろ」


 くそー、アイツら......


 弦人はあの場にいた面々の顔を思い浮かべながら、ギリギリと拳を握りこんだ。


「で、ここからが肝心なところだ。カラーの黒の配当は掛け金の2倍だ。奴らが賭けた大金の2倍の配当、いったい誰が払うと思う?」


 そこで、弦人はあっという顔をする。


「そう、胴元の俺が払うんだよ。俺はこの世界に来てから、色々な方法でそれなりに稼いではいるが、計算したらその配当支払うとさすがの俺も破産スレスレだ。お前が死んだら俺もトぶ。お前と俺はもう一蓮托生なんだよ」


「イヤ、一蓮托生ッテ、ソッチハ破産デ、コッチハ死亡ダカラ、全然タイジャネーヨ」


 弦人は口を尖らせて不満気にそう言った。


「まあその通りだが利害が一致してるってのは間違いないだろ」


「マダ納得イカナイコトガアル」


 弦人はまだ不満気に続ける。


「何だ?」


「アンタ、元ノ世界ジャ闇カジノヤッテタヨウナ海千山千ダロ。アイツラガソンナ賭ケ方スルコトクライ読メタダロウ。ナンデモットリスクガ少ナクテ、確実ニ儲カルルールニシナカッタンダ?」


「く、くく、くははははははっ♪」


 弦人の指摘に真島はまた笑い出した。


 だから、その笑い方コワいから、やめろよー......


 ドン引きしている弦人をよそに真島は目を血走らせ、口の両端を限界までつり上げ一気にまくし立てた。


「つまんねーこと聞くなよっ!! ギャンブルってのはなリスクがあるからギャンブルなんだよっ!! リスクがデカければデカいほど楽しいんだよっ!! なんだったら俺の命も賭けたいくらいだっ!! くくっ♪ くくっ♪ くははははははっ♪」


 真島は笑いながら両手を広げ、天を仰いでくるくると踊るように廻った。


 いやーーーっ、この人、やっぱめちゃめちゃコワいよーーーっ!!


 弦人はトンデモナイ人物に目をつけられ、心の中で全力で絶叫したのだった。



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