第19話 ひとの運命で勝手にギャンブルすんなよ!!
「これが......固有スキル......」
「はじめて見た......」
真島が展開したその光景に一同は呆然としていた。
固有スキル。
その名の通り召喚者それぞれに必ず一つ与えられる唯一無二の能力である。
ただし固有スキルが発現するのはレベル10を越えてからである。
そして今日参加していた第6期の召喚者たちの中でレベル10を越えているのは七瀬だけであった。
ゆえに他の全員にとって未知の領域なのである。
「俺の固有スキルはかなり限定的でね。見た目通りギャンブルのルーレットしかできねー。全く使えねースキルだが、色々愉しみ方があるんでまあ俺は気に入ってる」
真島はスキルの説明に続きルールの説明を始めようとする。
「ルールは基本的には元の世界のルーレットと同じだ。で、今回のルールだが......」
「おい、待てよ。俺達は別にルーレットなんて興味はない。参加する理由がないぞ」
冒険者の1人からそんな声が上がり、他の者も「そうだ、そうだ」と同調する。
真島はおっとしまったという顔をする。
「ああ、すまない、肝心なことを最初に話しておくべきだった。このルーレットで回るのはボールじゃない。お前らのヘイトを一気にかっさらったあの“レベル0”の“運命”だ」
真島のその言葉で一同の空気がかわり、ほとんどの者が真島のゲームに興味を抱き始めた。
「名付けて“勇者ゲントの大冒険”とでもしようか。アイツの宣言した1年後アイツがどうなっているかをお前らに賭けてもらう」
真島は盤上の数字を指差しながら、説明を続ける。
「赤は生存、黒は死亡、数字はレベルだ。例えば、1年後にレベル12で生存していれば赤の12だ。死亡していた場合は死亡時点のレベルをカウントする。つまり1年経つ前にレベル8で死亡したならば黒の8だ。が、数字をピンポイントで当てるのはインサイドベットと言って当選確率は低い。そこで初心者が多いであろうお前らには当選確率の高いアウトサイドベットをオススメする」
真島は盤上の枠を指し示しながら、アウトサイドベットの説明をする。
ファースト・ダズン(1〜12)→3倍
セカンド・ダズン(13〜24)→3倍
サード・ダズン(25〜36)→3倍
ファースト・コラム(1,4…〜…31,34の縦一列)→3倍
セカンド・コラム(2,5…〜…32,35の縦一列)→3倍
サード・コラム(3,6…〜…33,36の縦一列)→3倍
ローナンバー:(1〜18)→2倍
ハイナンバー:(19〜36)→2倍
イーブン(偶数)→2倍
オッド(奇数)→2倍
カラー(赤)→2倍
カラー(黒)→2倍
「まあ、ややこしいのがイヤだって言うヤツは、カラーの赤か黒に賭けるのがシンプルでいいだろう」
おおよそのルールを聞いて一同は口々に賭け方を相談し始める。
「あとチップだが俺の“運命のルーレット”にチップはない。この場で口頭でどこに幾ら賭けると宣言すればそれを後の“運命の女神”が記憶する」
真島はそう言って右手の親指を立て、背後にいるディーラー姿の人形を指す。
「きっかり1年後の今日“運命の女神”が勝者には配当を運び、敗者には賭け金を奪いに行く。言っとくが俺の女神からは誰も逃げられない。もし所持金が足りなかったら臓器の1個や2個平気で持ってくぜ♪」
そう言って真島は愉しそうに笑い、一同は敗北し所持金が足りなかったときの自分の姿を想像し戦慄した。
「さて、最後に、“一番大事なこと”を言っておく」
真島はそう言って思わせぶりに一拍おいてからこう言った。
「“ルールは以上だ”」
思わせぶりからの肩透かしなその言葉に全員が顔に疑問符を浮かべる。
「なあ、質問があるんだが......」
冒険者の1人が手を上げて質問しようとする。
が、真島はそれを手で制した。
「おっと、そこまでだ。言ったはずだぜ。“ルールは以上だ”」
真島の言葉に質問者は、えっ? という顔をする、
「いや、でも......」
質問者は質問を続けようとするが、さらにそれを真島は遮る。
「いいか、“ルールは以上だ” この意味が分からねーヤツはカモられるだけだから参加すんのはやめとけ」
真島はそう言って、ことさらに“ルールは以上だ” という言葉を強調し、一同は「それって、つまり......」「そういう意味だよな......」と、徐々に真島の意図に理解した。
“ルールは以上だ”
それは“この他にルールはない”ということだ。
つまり、“ルーレットの参加者が弦人の運命に介入しても良い” ということだった......
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