第12話 こんなに差が開いてるのかよ......

 男と七瀬はどうやら顔見知りのようだった。


「宮平っ!? てめー、なんのつもりだっ!?」


 男は突然割って入った七瀬を怒鳴りつけた。


「同じことを2度言わせないで。あとの予定がつかえてるのよ」


 七瀬はそう言って、視線で中央の壇上を示した。

 壇上にはいつの間にか、数日前フレアの家に水写しで現れた神官クロエが立っていた。


「皆様、お待たせ致しました。これより、神託の儀式を開始致します」


 クロエはその場の全員に聞こえるよう高らかにそう宣言した。


「ちっ」


 男は舌打ちして、渋々弦人の胸ぐらを掴んでいた手を離した。


 男が手を離したのを確認し、七瀬は剣を収め、無言でその場を離れた。


 この間、弦人はただただ驚愕していた。


 全く気付かなかった......


 そう、弦人の視点では七瀬は突然フッと現れ、現れた瞬間には剣の切っ先を男の喉元に突きつけていたのである。


 こんなに、差が開いているのか......


 悔しかった。

 大勢にばかにされたことよりも......

 自分だけ自動翻訳が備わっていなかったことよりも......

 同じ召喚者である七瀬にこうまで圧倒的な差を見せつけられたことが、何より悔しかった。


 弦人は人知れず、奥歯を噛み締め、拳を握り込んだのだった。



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