第10話 あれ?なんかヤバくね?

 七瀬の言っていた通り、弦人は身分を明かしただけで、すんなりと関所を通された。


 弦人が街の中に入った頃には、前にいたはずの七瀬はどこかに消えてしまっていた。


 くそ、神殿までの行き方とか、まだ色々聞きたかったのに......


 仕方がないので、弦人は関所の衛兵に事情を話し、神殿まで案内してもらった。


 弦人は道すがら、街を観察した。

 最初に訪れた街を大慌てで走り回ったきり、この世界の街並みをゆっくりと観察する機会がなかったのだ。

 道は石畳で、建物は木骨に白ろ塗りの壁で統一されている。

 建物の高さは大体3,4階建てがほとんどだ。

 人通りは多く、気を抜くとすぐに肩がぶつかって揉め合いになりそうなほどだ。


 流石に一国の首都だけあって、街は整えられてるし、人口密度も高いな......


 弦人は人並みを上手く避けながら案内の衛兵に付いて行っていた。

 20分ほど歩いたところで、ようやく目的のベルガーファ神殿についた。


 ギリシャのパルテノン神殿......

 いや、まだ新しいし、アメリカのリンカーン記念堂のほうが近いか......


 弦人は神殿の作りをみてそんな印象を受けた。


 弦人の案内は、衛兵から神殿の下級神官に引き継がれ、弦人は神殿の奥へと通された。


 そこは、どうやら大聖堂のようだった。

 弦人がテレビで見たことのあるカトリックの大聖堂にどことなく雰囲気は似ているのだが、部屋全体の形が正円で、礼拝者の席は階段状に円形に広がっており、中央にも円形の壇がある。

 大学の階段教室を正円にしたといえば近いだろう。

 そして中央の天井には、天然のものなのか、人工物なのか、青く透明で巨大な円錐状の結晶が逆さに横たわっていた。

 おそらくこの結晶が、十字架や神像のような信仰の象徴なのだろう。


 おー、なんか異世界っぽい!


 弦人は、元の世界と異なる文化の匂いを感じ、目をキラキラさせた。


 そんな弦人に冷ややかな視線を浴びせる者たちがいた。


 礼拝堂には先客が100名近くおり、みな、鎧や法衣に身を包み、剣や槍、斧、魔導書、錫杖などを携えている。


 かっこいい......


 いかにも異世界の冒険者らしい一同の身なりに、弦人はいっそう目を輝かせた。

 しかし、弦人はそこであることに気付いた。

 一同の顔立ちがみな日本人ぽいことに。


「ヤア!オレハゲント! モシカシテ、ミンナ、日本人カ!?」


 弦人は、自己紹介をしながら、全員に問いかけた。

 しかし......


「ぷっ......お前、なんだよ?そのなまり!?」


 誰かがそう言葉を発したあと、全員一斉につられて笑い出した。

 そして、みな、一様にバカにするような目で弦人を見ている。


 あれ?

 なんか、ヤバくね?


 その場の空気に、弦人はそこはかとなく嫌な予感がしたのだった。



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