第5話 【異能(脳)】

「人間が脳の10%しか使っていないて話聞いたことあるでしょう?」


七海さんは少しづつ話を始めた。【異能(脳)】という能力について・・・・



ほとんどの人が友人から、テレビや映画、インターネットなど様々なメディアからこの迷信の様な話を耳にしたことがあるだろ。

この話の起源は諸説あるが、19世紀後半から約100年にわたって広く信じられてきた。人は自らの脳の残された90%の可能性に大きな憧れや希望を抱き様々な研究や実験を重ねてきた。

その結果、最新の科学技術で脳を常にスキャンし研究した結果、人の脳はほぼ100%活用されているという一つの結論に達した。

「脳がダメージを受けても睡眠中もあらゆる行動・時間において、脳は領域ごとに有している異なる機能を活用し、常に協力して働いている。」

これが最新の科学が証明した一つの真実だ。


しかし・・・・・どこまで科学が発達しても測定できないことや解明できないものがこの世には常に存在している。

脳の持つ一つの可能性「異能(脳)」。その特異な力もその一つだ。

「異能(脳)」は我々が生まれ成長する途中で行われる「シナプス刈り込み」の結果取り残された「敗者」の登上線維の異常発達によって生まれる。


我々を含め生まれたばかりの動物のプルキンエ細胞では、5本以上の弱い登上線維がプルキンエ細胞の細胞体にシナプスを形成している。しかし成長するにつれて1本の強力な登上線維が、細胞体から張り出した樹上突起に移動できシナプスを形成している。この勝ち残った強力な登上線維が「勝者」の登上線維である。


一方「敗者」の登上線維は細胞体に取り残され成長と共にほとんどが除去される。「敗者」の登上線維は、プルキンエ細胞に起こすシナプス反応の伝達物質の素量サイズや伝達物質の放出確率が「勝者」の登上線維と大きな違いはない。

この「敗者」の登上線維の中でシナプス反応の伝達物質の素量サイズや伝達物質の放出確率が異常に大きかったり多いにも関わらず、選別の際に、複数のシナプス小胞を同時に放出できなかっただけの登上線維があったとしたら・・・・・・この残された「敗者」の登上線維同士が独自のシナプスネットワークを構築し生み出される力が「異能(脳)」の正体である。



「愛美ちゃん、あなたは時期に異能(脳)の力が現れるわ。その力がどんなものなのか、いつ現れるかははっきりわからない。」


「七海さん・・・・その異能(脳)ってどんなものがあるんですか?」


これから自分の身に起こることが一体どういう物なのか・・・・得体の知れない変化への恐怖からか愛美は震えていた。


「私が知ってるのは、人の頭の中に直接声をおくれるテレパシーのようなものや、離れたところにあるものを動かせる力とか・・・そんな感じかな。」


「じゃあ愛美は超能力みたいな力が使える様になるってこと?」


信が七海さんに尋ねた。


「そうね。基本的には魔法みたいなものじゃなくて、自然の法則に乗っ取ったものが多いみたいね。でも中には別の世界へ影響を及ぼすことができる力や怪我を治す力とか・・・・本当に不思議な力があるのも事実よ。」


「じゃあ・・・・愛美が急に目の前から消えたのもひょっとして・・・」


「大輝くん賢いわね!その通りよ。

昨日愛美ちゃんが拐われたのも異能(脳)者の力よ。

愛美ちゃんが拾った貝殻に別の世界へ移動するための何らかの力が込められていたんだと思うわ。私が愛美ちゃんを助けに行ったときにいた2人のどちらかが、別世界へ干渉できる能力を持っていたんでしょうね。

ただ、別世界への移動は精神と身体への負担が大きいから異能(脳)者でもそう簡単にできることじゃない。愛美ちゃんがこうやって無事に戻って来れて本当によかったわ。」

(そう、昨日の二人・・・愛美ちゃんを追ってくる様子もなかった。世界間の移動のリスクを冒してまで拐ったのに・・・一体何が目的だったのかしら・・・)


「じゃあ七海さんは別の世界へ行ける異能(脳)者ってこと?」


俺は七海さんに尋ねた。


「残念。私は異能(脳)者ではないわ。なんの能力もないただのか弱い女性よ。」


「えっ!七海さんはどうやって私を助けにきてくれたんですか?」


「大輝くんのお父さんよ。おじさまが別世界への移動ができる異能(脳)者なの。」


【下神誠司】地元では古くから続く神社の家系。親父はそんな古い小さな神社の冴えない神主である。

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