第4話 帰還

親父は静かに話し始めた。

俺たちとは別の世界の話を。少しずつゆっくりと。

正直言って全く理解ができなかった。理解ができないと言うより現実味のなさすぎる話に、小説か何かを朗読してもらっているような感覚だった。


「別の世界?、世界が融合?【根】?一体なんなんだよ・・・・」

「大輝、突然のことで戸惑うだろうが全て真実だ。」

「・・・・・・」


俺は無言で親父を見つめた。親父の目を。

決して嘘ではない・・・・そう思わせる様に真剣な眼差しだった。


「・・・・・親父はなんでそれを知ってるんだよ。なんで愛美がいなくなったんだよ。」

「それは私から説明しようかしら?」


白銀。

まさにそう言うのが相応しい本当に綺麗な銀髪の女性が俺の目の前に現れたのだ。

「大輝!大輝よね!」

「愛美!」


その銀髪の女性は脇に愛美を抱えていた。


「早かったな七海。じゃああとは任せていいか?」

「おじさま。もちろんです。それが私の役目ですから。」

【七海(なみ)】と言われた銀髪の女性がそう言うと親父は静かに立ち上がった。

「親父。話はまだ終わってないけど・・・・」


俺がそう言うと


「続きは七海がしてくれる。愛美さんと信くんと3人でしっかり聞きなさい。」

親父がそう言うと信が部屋に飛び込んできた。



「愛美!本当に愛美だよね!!大丈夫!?」

「信!私だよ!大丈夫!!大丈夫だよ!ちゃんと帰ってきたよ!!」

「・・・・・おい・・・信。足をどけろ・・・・」

「大輝!あ、ごめん。焦ってついつい踏んづけちゃった。」

「これのどこがついついだよ!」


信は部屋に入ってくるなり愛美目がけて猛ダッシュ。間に座っていた俺はと言うと・・・・思いっきり信に乗っかられていたのだ。


「大輝、信・・・私本当に帰ってこられたんだね。良かった。」


愛美は涙を浮かべてそう言うとその場に崩れるように倒れ込んだ。


『愛美!』


俺と信の声がハモった。


「いきなり世界を移動したから仕方ないか・・・愛美ちゃんなら少し休めば大丈夫だから。」


七海さんはそう言うと愛美を抱えて寝室へと運んだ。



七海さんは、この世界の他にも無数の世界があること。俺たちの世界が他の世界を引き寄せ全ての世界が崩壊の危機にあること。そして俺たちの世界だけがなぜか【宗教】と言う形で「神」が複数存在すると言うことを俺たちにも分かりやすく説明してくれた。そしてその世界崩壊の危機に俺たちが関わっていると言った。

親父からお話を聞いているときは、いまいち信じられなかったが、愛美が無事に戻ってきたことで少しは落ち着いてきたせいか七海さんの話はスムーズに頭に入ってくる感じがした。


「あ〜疲れた!私も少し休むから、続きは愛美ちゃんが起きてからにしようかな。一仕事終わったあとはこれよね!あなたたちも食べる?」


そう言って七海さんはでっかい団子を俺と信に差し出した。こんなでかい団子どこにあったんだ・・・・・



「光一くん!勝手に出かけちゃったのね!私と一緒じゃないと危ないじゃない!何かあったらどうするのよ!」

「綾乃さんお買い物で忙しいって言ってたから。それに今回はちょっとお話に行くだけだったから危なくないかなぁ〜と思って。」

「綾乃。今日は私が光一と一緒だったんだから危なかったら事前に視えるから大丈夫よ。」

「カレンの場合は『今日も』でしょ。いつも光一と一緒なんだから妬けちゃうわ!」

「う、うるさいわね!私は光一の安全のために!!」

「二人とも仲良くしてくださいよ〜。

あ〜そういえば綾乃さん例の件はどうですか?」

「そうね・・・もう少し時間がかかると思うわ。これだけ【根】同士が近すくと移動の負担は大き行くなるから・・・・」

「そうですか・・・なかなかうまくいきませんね・・・でもそれが面白いんですけどね」


光一はうっすらと笑みを浮かべながら暗い廊下へ姿を消していった。



愛美が目を覚ましたのは翌朝の事だった。


「愛美ちゃん気分はどう?」

「えっと・・・・私・・・」

『愛美!大丈夫!?』


俺と信は同時に駆け寄った。


「愛美ちゃん、昨日は大変だったわね。戻ってきてすぐに意識なくちゃってそのまま朝まで寝てたんだよ。」

「あ!あのときの・・・えっと・・・」

「七海よ。よろしくね!」


俺と信があたふたとしてる間に七海さんはそう自己紹介をした。


愛美の回復を喜ぶ俺たちを七海さんは黙って見つめていた。

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