孤独死~引き取り料金、ハウマッチ~

美杉。節約令嬢、書籍化進行中

第1話 鳴りやまない電話

 仕事終わりにスマホが鳴り響いた。

 見たこともない、固定電話からの着信。私はそれを眺め、ただ鳴りやむのを待った。当時、留守番電話になどしていないスマホは永遠に鳴り続ける。着信がどこからか検索して出ようと思っていたのに、全く鳴りやむ気配はない。


「はぁ」


 ため息一つ。諦めた私は通話ボタンを押した。


「すみません、杉山さまの携帯でよろしいでしょーか」

「……えーあー、はい」

杉山未来すぎやまみく様ですよね~」

「いやいや、いきなり知らない人に名前言われて、はい、そーでーすって言うと思います?」


 相手方の声の主は20台後半ぐらいだろうか。なぜ私のフルネームを知っているのだろう。そして何より、スマホの番号を。

 新手の勧誘にしても、これは少したちが悪い。適当にあしらって切らないと……。


「あーですよねー」

「デスヨ」

「すんません。自分、福岡県警察の橘と言います~」

「えー、未来なにも悪いことしてません。最近は」

「え、最近は、なんですか?」

「あ、いえ。気のせいです」


 福岡県警察。

 その言葉を何度か頭の中で反芻はんすうした。私が今いるのは静岡県だ。そこから福岡まではどれほどの距離があるだろう。

 落とし物? いや、そんな遠くまで旅行へ行ってないし。子どもじゃないんだから、風船に手紙つけて飛ばしたとか、そんなこともしていない。

 おどけてはみたものの、なんとなくこの手の電話の意味は分かる。


「突然のお電話すみません。あの、失礼ですが杉山洋一すぎやまよういち様はお父様でお間違いないでしょうか」

「あーーーーーー。そうですね、たぶん父親ですわ。同姓同名の別人じゃなければ」

「あ、いや、そこはたぶん大丈夫かと」

「それなら父じゃないですかねー。それで母だったら困るし」

「TSっすか、今流行りの」

「いやぁ、リアルでそれはちとキツイかと」

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