第44話 勇者との再会
「この出力……!? まさか……」
聖剣と魔剣が
金混じりの膨大な光を纏った斬撃は凄まじい破壊力を秘めており、並みの
このままでは分が悪いと、“
亜麻色の長髪。
見覚えのある鎧姿の少女。
「アイリス……か」
「――」
それはアースガルズの勇者――アイリス・アールヴに他ならない。
ただ聖剣――“プルトガング”を手に
「ヴァン!」
「問題ない。でも、これは……」
俺とセラを見つめる生気の無い瞳。
まるで消えてしまいそうな希薄な存在感。
「フハハハハハッ! どうだ?
「貴様……」
「切り札は最後まで残しておくものだ! どうやら私の方が上手だったようだなァ!」
馬鹿笑いする皇帝はどうでもいい。
問題は奴がアイリスに何をしたのかということだ。
「外傷無し、魔力の流れも異常無し。そして、アイリス自身の意思が全く感じられない。まるで
「ふん、理想の勇者となる様、本国に残して来た我が
“
「“
「ククッ! そうとも! 今のアイリスは、アースガルズを守護するという使命を背負った自動人形にも等しい! アースガルズの……我らが求めた真の勇者へと昇華したのだ!!」
「腐っている……!」
「何とでも言うがいい。余の辞書に失敗という文字はないのだからなァ!
俺の存在がアースガルズ側にどんな風に伝わっているのかは分からないが、少なくともアイリスは、こんな侵略戦争に
「こうなれば、その小娘はどうでもいい! 聖剣は後で回収すればいいのだからなァ! さあ、アイリス! 全ての敵を殲滅せよ!」
「――」
「フハハハハハ――ッッ!!」
だからこその洗脳。
それも“
ただし、アイリスの意思を捻じ曲げて、無理やり従わせる史上最悪の――。
「……大した皇帝陛下殿だ。自分が三流であることにすら気づかずに馬鹿笑いとはな」
「フハハハ……ハ、ハ……な、何ィ!?」
「成金主義で
「き、貴様ッ!」
「時代が時代なら名君になれただろうが哀れだな。乱世の英雄としては、ド三流もいいところとは……」
「貴様ァ! やれェ! アイリス!」
「――」
アイリスが
普通の相手ならこれで全てひっくり返せるかもしれないが、アレクサンドリアンは致命的な
それは聖剣の勇者を過大評価し過ぎているということ。
「逆上して突っ込んでくるか……でも!」
確かに聖剣の勇者は、他の
つまり同等以上の力で、その進軍を食い止めることは可能。
俺がアイリスを抑えれば、セラは完全フリーで行動できる。後は敵の大軍が体勢を立て直すまでに、皇帝以下数名の身柄を抑えれば――と思って蒼穹の眼光を放てば、隣から蒼銀の影が躍り出て、
「ヴァン、此処は私が!」
「……セラ!?」
二振りの聖剣が
刀身から漏れ出た蒼銀と黄金の光が天を
「貴方には、決着を付けなければならない相手がいるようだ。行って下さい」
「だが、攻撃を無力化できる俺が残る方が……」
「いえ、今だけはヴァンに宿った災厄の力が救いとなり得る。貴方も分かっているはずだ」
銀と金の光が剣閃となって交錯する。
「術者……というより、敵皇帝の持つ
そう、狙い撃つとすれば、アレクサンドリアンの手元で光っている趣味の悪いブレスレット。そんなことは分かっている。
だがアイリスとの関係は俺の感傷であって、セラには関係ない。殺す戦いならともかく、自分も相手も死なない戦いを強いるなど、余りにも危険で不合理すぎる。
だが――。
「
その鋭い眼差しに宿るのは、確固たる意志。
セラの覚悟。
「――ッ!」
そんな時、突如としてアイリスの攻撃の手が強まる。人形の様だった顔に、一瞬表情が戻ったような気がした。まだアイリスの心は死んでいない。
「だから、行ってください。今は貴方の闘いを……」
剣閃が煌めく。
蒼銀の刃が黄金の波を斬り裂き、セラが躍動。白く長い脚が鞭のようにしなり、アイリスの頭部を激しく揺らす。
殺さず、死なず――聖剣保持者相手に、そんな無茶を最後まで貫くと言い張っているも同じ。
なら、俺は――。
「分かった。すぐに戻って来る」
「ええ、また……」
俺はセラにこの場を託し、最後の敵へと
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