閑話④ それはひどいわ

真太郎が掛橋と揉めて5日が経った。

この日は土曜日だ。


LINEの通知が鳴った。

晴彦からのLINE…ではなかった。


?「今日暇?」


送り主は後藤ごとう範博のりひろだ。

函館はこだて市出身の43歳。


2年前の4月に真太郎と同時に今の派遣先での就業を開始した。


入ってすぐの時は連絡を取り合っていたのだが、近々連絡は取り合っていない。


というのも真太郎が単独行動が多いのもそうだが、意図的に彼を避けてる面もある。

LINEで語弊のあるメッセージがあったり、真太郎が好きなものを食べていると「いつか成人病になる」と言って小さな事でもすぐにマウントを取るからだ。


次第にお互いすれ違いが多くなったのだ。


真「暇ですよー!」

後「ラーメン食べに行くか!」

真「いいですね!どっちの車で行きます?」

後「お前が運転しろよ」


何で自分のから誘っておいて人に運転させるんだよ…!?

しかも何で命令口調なんだ??


まあでも誘われたんだし久々に共に時間を過ごすとするか。



「なんか同じく働いてる所の社員と揉めたんだって?」


車の中で後藤は、真太郎に月曜日に掛橋と口論になったことに対して言及してきた。


真「そうですね。」

後「何でその人と揉めたの?」

真「出勤していきなり『何でお前が休日出勤したいって言ってたのに出してもらえなかったかこの休みで考えなかったのか?』とか言い出してきて…。」

後「それで…考えなかったんだ。」

真「俺は『出ます。』って積極的な姿勢で言いました。でもリーダーからは人足りてるからいいって言われて。」

後「うん。それで?」

真「そいつが言うに主任の水口さんが俺を出さなくていいって言ってたらしいんですが、その理由を聞くと主任が言ってたことじゃなくて自分の独断を話し始めるんですよ。ただの八つ当たりじゃないかって思いましたね!ムカついたから堂々と言い返してやりましたよ!」


すると、


「それはひどいわ…。」


後藤が一言呟いた。


「いや〜ひどいですよね!あんな理不尽な言われ方したからもうイライラしてたまりませんでした!」


真太郎がその時の気持ちをぶつけたその時だった。



「いや、お前にひどいって言ってんだよ!」


まさかの衝撃的な言葉だった。

後藤が真太郎の話を聞いている時、真太郎の身になって聞いている感じではなかった。


休日に美味しいものを食べに行くというのにまた更に追い討ちをかけられ、楽しいはずの休日が台無しだ。


「普通にさ、それを考えないで平然と遊んでたお前が悪いでしょ。仕事もできててそれなりに働いている人だったらわかるけど、派遣だし色々仕事もこなせてないうちから出してもお金がもったいないよ。」


一方的に真太郎を責める言葉だ。


お互いに働いている工程も違うのに真太郎の仕事状況を知ったかぶって話していることが真太郎にとって不快感であった。



真太郎は確信した。


こいつの誘いには二度と乗らない!

こいつとはもう二度と時間を共有しない!


「まあ…そういう考えもあるんですね。」


こいつと一緒にいても楽しくないしこいつと一緒にいるだけで時間を無駄にした。

そう思うしかないという気持ちになっていた。


だが、この一言が火に油を注ぐ。


「『まあ』ってなんだよ。楽してお金貰えるって考えがもう本当に子供だわ。ガキだわ。何?『そういう考えもあるんですね』って?何様だ?お前の何十年生きてると思ってんだよ?」


冷静な言葉で真太郎をめった打ちにする。


「あぁそうですね。すみません。」


真太郎は後藤に一言謝る。


「いやぁ…軽いなぁ…!?」


そんな不穏な空気を乗り越え、ラーメン屋に到着した。


真太郎は後藤からも理不尽な追い討ちをかけられたことで、美味しいはずのラーメンが喉を通らなかった。


食べ終わって集合寮に戻った後は、さっさと一人で札幌に出かけたのだ。


後「出かけたの?」

真「はい!行ってきます!」

後「絶対に反省してないよな…??」


この一言を気に返信しなかった。

これから週末を過ごすのにこれ以上不快な思いをしたくないからだ。



そして何よりも…



後藤との時間は絶対に共有しない!!!!

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