閑話③ 週明け後の嵐

北山サブリーダーと西野リーダーの仲介により、真太郎と掛橋は言い争いをやめた。


「鹿嶋!何おめぇ睨んでんだよ!!」


西野は再び怒鳴った。



鹿嶋かしま敦也あつや

23歳でありながら既婚者であり子供もいる。

真太郎よりも年下でありながら、入社当時から正社員の先輩だ。

掛橋より後輩であるが、彼より仕事ができる。


そんな鹿嶋が真太郎を睨んだのは、単純に真太郎の態度が気に食わないからだ。

後輩なんだから先輩の言うことにはヘコヘコすることが当たり前だと思っているのだろう。


人間性でいうと、無口で自分の考えや主張を表に出さないことから、多数派の意見に転がり込む受け身の性格である。

だから、掛橋が真太郎に対して理不尽な文句を言った時、真太郎がそれに対しおかしいと主張しぶつかろうとする姿勢は、鹿嶋にとってあり得ないことであった。



掛橋と鹿嶋はリーダーの西野に呼ばれ、作業場から少し離れた休憩室に連れて行かれた。


北「大丈夫か?気にすんなよ?」

小「本当…無理に言い返さずにさ、西野さんが近くにいたから止めに入ってくれたからよかったけど。今のは掛橋くんの言ってること間違ってるからね。」

北「相葉は悪くない。でも鹿嶋が睨んでたのは、言い返したからだよ。あと先輩に対して『お前』とか言ってたし。他の会社だったらまずいけどな。」

小「それはそうっすねぇ…。」

真「本当にすみませんでした。」

小「いやいや。相葉くんは何も悪くないから気にすることないよ。」

北「うんうん。」


サブリーダーの北山と小田原は真太郎をフォローしてくれた。

真太郎にとってこの2人の存在は、とても仕事がしやすい環境を作ってくれる存在であり、そういった人たちのもとで頑張ろうと思った。



しばらくして、日勤の人たちがもう少しで帰る時間帯となる。


真太郎と鹿嶋はすれ違おうとしていた時だった。


「相葉お前調子に乗んなよ?誰に口に利いてんだ??」


お前??

てめぇの方が年下で何も知らねえクソガキだろうが!!


真「すいませんね…!!」

鹿「すいませんじゃねえんだ…??チッ!」


鹿嶋は掛橋に言われていた。

「お前の言いたいことは言ってやったからな?だからもうこれ以上何か言って俺らが悪くなるの馬鹿くさいだろ?」


だが、鹿嶋は自分からも何か言わないと気が済まなかったのだろう。



嫌々休日出勤した2人から八つ当たりを受け小田原と北山からフォローされたことによって、少しもやもやした気分が晴れた気がした。


休憩中のことだった。


「¥☆♪÷#か?」


はっきりと聞こえはしなかった。

「大丈夫か?」と言ったのだろうか?


真太郎に声をかけたのは松原まつばら義朗よしろうだ。

松原は真太郎に代わって休日出勤に参加した一人だ。

真太郎と同じく派遣社員であり、今年で50歳になる。


「はい…大丈夫ですよ。」


そう答えた時だった。


「はぁ?別にお前のことなんか何も心配してないってよぉ…。何が大丈夫なのよ…?はぁぁ…。」


呆れた感じで薄ら笑いを浮かべて言う。


「今俺『そんなに偉いのか?』って言ったんだぞ?いやぁ本当…何様だよ…!?」


真太郎はまた更に不快感を覚えた。

何で自分に対してこんなにも八つ当たりする奴らが多いんだ??

それでしか自分自身を表現できないのか…!?


真太郎のどこかでまがまがしいスイッチなるものが入った瞬間だった。


今朝、真太郎の持っていた仮想通貨の価値が30倍以上に暴騰した。

休憩中にスマホで自分自身が持っている仮想通貨の価格を見ながら、喜びを覚えると共に自分に対して八つ当たりした3人に対し、恨みの感情が芽生えた。



あいつらの言動はまともなものじゃない…。

あいつらみたいな人間にはなりたくない…。


お前らが副業禁止をバカ正直に守ってネガティブな言動を撒き散らしてくるなら、俺はいつかこの仮想通貨で儲けた事実を武器に大迷惑をかけることだってできるんだからな??




今日この事はずっと根に持ち続けてやる……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る