第17話 自分を頼りにしてほしい

お互いに小樽での思い出を語った相葉と武史たけふみ


それは純粋にワクワクが詰まった内容で、何か少し物足りない感じ。


それでも、今こうやって話し合えたからこそお互いにとって前向きに捉えられるのだ。


相「それで、ひかりちゃんとは連絡取ってないの?」

島「それがさ…連絡先交換してないの。」

相「えーーーーっ!?でもさ…また会いたいなとかってならない?」

島「そりゃあなるよ。でもその時はどうやって旭川から札幌に出てこようかと考えてるところだったし…。」

相「え、でも遠距離でも会いに行ったりとか会えないときにLINE通話したりとか出来るのに。」

島「まず連絡先交換しようっていう勇気がなかった…。あとこれ親に話したら『旭川でいい人見つけなさい!』とか言われるし…。」


武史たけふみの親は、ああしろこうしろと一方的に生き様を決めようとする人らしい。


札幌に住みたいと言っても「旭川でいいだろ!」と一蹴し、夢や目標を持つと必ず否定から入り否定し続ける。


武史たけふみは地元の空港で働いていたが、長期出張を終え東京から帰ってきた直後に様々なトラブルを起こしクビになった。


トラブルに関しては武史たけふみに非がある。

だが、親は武史たけふみをフォローする訳でもなくボロクソに言ったらしい。


これを機に、仮想通貨で稼いでることも打ち明けたが、武史たけふみの親は案の定激昂し始めた。


武史たけふみも溜まりに溜まっていた思いが爆発し、父親と取っ組み合いになった。


しかし、武史たけふみは父親に喧嘩で勝つことができなかった。


親はもう武史たけふみが言うことを聞かない…いや、機能しないと判断したのだろう。


「さっさと出て行け!お前なんか子どもでも家族でもない!他人はどっか行け!」


強烈な一言だった。


武史たけふみは泣きながら家を飛び出し、旭川駅前のホテルに泊まり、部屋で一人号泣したという。


札幌への引っ越しで実家に戻ったのが最後だ。

それ以来地元の旭川には帰っていない。



俺はそんな悲しいエピソードを聞いて心が傷んだ。


相「どうしてそんなに平然と話せるんだ…?」

島「もう過ぎたことだし…盆も正月も帰って過ごせる家族も実家もないから…。」


相葉は思い切って武史たけふみに正直な気持ちを打ち明けた。


相「もしこれから何か溜め込むようなことがあるなら…自分を頼りにしてほしい!!」

島「えっ?」

相「こんなに前向きにがむしゃらに生きてるのに否定されてたなんて俺…聞いててとても心が苦しいよ。」

島「し…真ちゃん。俺はもう甘えなくても…」

相「そう言う時こそ頼れ!信じろ!おかしいことをいうかもしれない…。」


多分誰もがこんな事を言わないだろう。


相「俺の弟になれ!」


何言ってんだ…俺。


島「……?」

相「……(やばいこれは…)。」

島「あーっはっはっは!!」


なんと武史たけふみは大笑いし始めた。


相「あれっ?あっ?武史たけふみ?」

島「いや、そう来るとは思ってなかったあっはっは!」

相「すっ…すまん。」

島「わかった。真ちゃんの弟になる。」

相「まじか!可愛いやつだな!」

島「ありがとう!よろしくねお兄ちゃん!」

相「ここでお兄ちゃんって言われるの恥ずかしいなぁ〜。」


そんな訳で、相葉は武史たけふみのお兄ちゃんデビューしたのだった。



俺の弟は2人いるんだ。

まず実の弟。

そして…同性にナンパして持ち帰られる弟。


武史たけふみは札幌にいる。

これから俺は札幌でホテル暮らしだ。

いつでも会えるしそばにいてあげられる。



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