第15話 そういう時があってもいい

野宿しようとしていた武史たけふみを、自分の泊まっているホテルを紹介し、宿泊させた。


それにしても、何でナンパされた方が持ち帰る側になってるんだよ…。

しかも女1人捕まえられなさそうな奴に俺は捕まった…。

彼のナンパの初成功に貢献してしまった…。



相「大浴場行こうか?」

島「あっ、うん。行く!」


武史たけふみは大浴場と聞いただけで、テンションが上がる。


まるで子供のようだ。


大浴場に着いて服を脱ぎ、浴室へ入ると

「うおぉぉ〜〜!!」


と浴槽を見て興奮し始める。


相「めっちゃ嬉しそうだね。大浴場は好きなのかな?」

島「うん好きだよ。でも温泉とかあまり行ったことないからさ、色んなお風呂があるのを見ると楽しくなるの。」

相「おー!よかったな!後で露天風呂もいこうな武史たけふみ!」

島「うん!」


まるで弟を連れて来ているみたいだ。

野宿する前に小樽運河で出会っておいてよかった。

こいつを見てると俺も幸せに感じてくる。


島「すご〜い!広〜い!」

相「そうだね。他のお客さんいるからはしゃいで泳いだりしちゃダメだよ。」

島「それは流石にしないよ〜。真ちゃんの隣にいるから。」


そこまではしないか笑

逆ナンパされたいがためにロマンチックな姿勢を考えるくらいませてるもんな。

それにしても、本当にもう一人弟ができたみたいだ。かわいいな。


2人は体と頭を洗い終えたので、露天風呂に向かった。


「え〜なにこの丸いお風呂!?」


武史たけふみがジャポーンと入ると、お湯が外に流れ込んだ。


「ここはオイラの場所だぁ〜!」


と言った直後、真太郎は武史たけふみが入る釜風呂に入り込んだ。


島「何か急に入ってきたぁ〜うははは!」

相「おしくらまんじゅう押されて泣くな♪」

島「あはははは!ふはははは!」


まるで兄弟のように釜風呂で仲良く盛り上がる2人だった。


相「風呂上がったらさ、一緒にビール買って乾杯しようよ。」

島「いいね真ちゃん。ゴクゴク飲んでぷは〜〜っと行きたいね。」


まぁ〜た大人びた言葉使っちゃってぇ〜〜。



大浴場を上がった2人は、向いにある休憩スペースで無料で食べられる蕎麦そばを食べた。


相「風呂上がりに蕎麦いいよなぁ。うめぇ。」

島「これ本当に無料なの?あとでお金払ってって言われたら…」

相「ないない。ちゃんと無料って書いてるでしょ?」


蕎麦を食べ終えて、缶ビールを買う。


「カンパーーイ!!」


2人声を合わせて言った後、ゴクゴクとビールを進める。


島「あぁ〜うめぇ〜最高!大浴場にも入って蕎麦も食べれて!ここのホテルすげぇや!」

相「それはよかった。野宿しなくてよかっただろ?」

島「本当に野宿しなくてよかったわ〜!」

相「てか野宿出来るところねぇよな!?」

島「本当だね。」

相「武史たけふみもこうやって自分をリラックスさせればいいのにね。俺はいつもいつも何かしら我慢するのは無理だからね〜。」


俺は武史たけふみに対して、時には自分にご褒美があってもいいんじゃないかと思った。

だから俺は武史たけふみに対し、暖かく一言呟いた。



「そういう時があってもいいんだよ!?」

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