第12話 いつでも会えるから

回転寿司では、お互い顔しか知らなかった"店員と客"の関係。

でも、ホテルのパーティーを通じてその関係から一歩先へと踏み出せたのかもしれない。


そう相葉は思っている。


相葉は大学時代、釧路くしろ市に住んでいた。

家から自転車で10分ほどで着くショッピングモールの中にあるジーンズショップの店員と仲良くなり、プライベートでも仲良くできないかと考えていたことがある。


だが、その女性とは"店員と客"以上の関係になる事はなかった。


大学4年の夏、通信業界から内定を貰った相葉は、ジーンズショップに行ってその女性に自分が内定を貰って、就職活動を終えた事を報告しに行った。


だが、その次にジーンズショップに行った時に、男性の店員から話をかけられた。

その女性は、結婚して子供もいるとのことだ。就職が決まって釧路くしろを離れることがもうわかっているなら、もうその女性とはこれ以上関わらないでほしいとも言われた。


この強烈な事実に、相葉は胸が張り裂けそうな思いをし、嗚咽おえつをあげながら1人で帰宅した。


おかしいよな…。ここを離れるとわかっているのに仲良くし続けたいなんて…無理だよ。



大「相葉くん?大丈夫??」

相「あっ、はい!すみません!大丈夫ですよ!!」

ノ「な〜に妄想してたんだぁ〜?マリちゃんとデートしてたか〜!?」

相「いやぁ違いますっ…。まっ…まだ!」

女1「まだ?まだだって!」

女2「まだってことはぁ〜〜?」

早「やめて!もう〜!真太郎!!変な妄想やめなさい!」

相「うぉ〜〜。下の名前で呼んでくれた。嬉しい。」

早「聞いてんの?ねぇねぇ?もう一発ほしいんでしょ?」

相「いやいやいや、もう大丈夫だよ?まりりん!!」


バンッ!!


相「いってぇぇぇぇ!!!!」



パーティーが終わり、これから自分の泊まっているホテルに戻る。


大森さんやノブさん、それにまりりんを含む女性たちにも見送られる。


ノ「じゃあな相葉くん。初めて会ったのにこんなに楽しめるなんて思ってなかったよ。また会った時はかっつり飲もうぜ!ガハハッ!」

相「こちらこそお会いできて嬉しいです。またこういう機会があればよろしくお願いします。」

大「またいつでも声かけるよ。相葉くんは…札幌かどこかで家借りるのかい?」

相「そうですね〜。しばらくはホテル暮らしですかね〜?」

大「え〜金かかるじゃん。それならもう住んじゃった方がいいしょ?」

相「しばらくは投資と副業で稼いだお金を自由に遣ってみたいので。」

女「マリ〜〜!今の聞いたぁ!?」


俺は最後までイジられる。


大「それじゃあまたね相葉くん。ちゃんとマリちゃんの働いてるお店に行って顔出してあげるんだよ!」

相「はい。もちろんです。お店はもうちゃんと行くので!」


そして麻里恵に一言。


相「またね。まりりん!」

早「はいはい…。またねっ。」

女「ちょっと冷たっ!?」


もうちょっと感情込めて欲しかったけど…まりりんらしいからそれでいい。


大「またいつでも会えるんだからさ。相葉くんからも何かあったら連絡してね。」

相「はい。」


そう言って俺はホテルに戻った。



それにしても、ノブさんの「ガハハ」はいまだに脳裏に焼き付いている。


本名 篠宮しのみや昌信まさのぶ

40歳



頂いた名刺を見ながら、俺はまたこの人たちと飲める事を楽しみに思いながら、明日の計画を立てる。

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