第6話 今日いっぱいで終わり
俺は派遣元の担当から電話があり、急遽自分の住む集合寮へ帰ることとなった。
ホテルは金曜日チェックアウトなので、ルームカードキーを持ったままバスに乗り、集合寮へ向かった。
◇
バスを降り徒歩3分ほど歩くと、自分の住む集合寮がある。
集合寮に着くと、派遣元の担当と派遣先の人事が何やら会話をしている。
彼らに近づいてみると、なんと担当は人事に怒られており、担当は人事に対し小さな声で「申し訳ありません。」と2回ほど頭を下げていた。
俺は2人に対して、どういう顔で挨拶していいかわからなかった。
相葉が近づいて行くと、人事はそっぽを向き始め、どこかへ行ってしまう。
「お疲れ様です…。」
派遣元の担当に恐る恐る挨拶をする。
「ちょっと…2階の喫煙所行こうか…。」
挨拶を返さずに、暗い気持ちと低いトーンで一言言って寮の中に入って行く。
俺は、派遣元の担当に引き付けられる磁石のように、後ろを歩いた。
◇
ここから本題が始まる。
「うん…ちょっとね…契約が今週の金曜日までってなっていたんだけど、今日いっぱいで終わり。」
やはり、俺が遊びに行ったことがバレていたようだ。
日付が変わっても相葉の靴がなく、寮の中で履いていたスリッパがあったので、心配になったかどうかはともかく、上に話がいったという。
「えーっとね、とりあえずもう荷物の整理ができていて、もう寮を出られるなら今日出て行って欲しいって…。まだ準備ができてなければ、明日の午前中になるけど…どう?荷物の準備はできてる?」
「はい…。もう準備はできてます。」
「うんうん、そうか…。」
担当は、相葉の現状確認をし、話を続ける。
「あのね?今週いっぱいってことは、欠勤扱いではなくて出勤停止扱いになるんだよね。だから君は一昨日から今日まで仕事してないけど、給料貰ってるんだよ?」
仕事をしていない上に、お金まで貰っているのにも関わらず、俺は遊びに行った。
働いている人たちの気持ちを踏みにじったことに、流石に反省する。
それでも、自分を切った理由が「何でウチ以外で収入得てんの?」ってことだろ?
副業を認めてる認めてないの問題は、派遣先が首を突っ込むことじゃないだろ??
「辞めたかったなら辞めたいって自分にひと言連絡くれればよかったのに。」
「別に辞めたかったわけではありません。」
「そうなんだね。でもやっぱり直雇用で働いている人はきちんとルール守ってるわけだし、それに対して相葉くんを妬んだりする人もいるかもしれないからね。後は相葉くんがもし人として問題があるようなことを仮にやっていたとすれば、"周りに迷惑かけてない"っていう言い訳は通用しないからね。」
俺は、この人の言っていることが正論であることはわかっていた。
今の言い回しからすれば、やはり俺が副業と投資で稼いだことが原因だろう。
今は人生100年時代と言われている。
大手企業でも副業が認められてきている所も多い。
物価は上がり続ける一方で、収入は上がるどころか下がるとも言われている。
一方的に忙しさを押し付けて、自分の興味あることやためになることを否定する環境から逃げるのは、最善策だと思う。
その覚悟があなたにできているのであれば。
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