交互にハレとケは起こる(2月21日〜27日)

 2月21日(月)

 ときはきた。

 というわけで初・母を乗せて車椅子運転。思ったよりいける、さすが『京都東山「お悩み相談」人力車』(発売中です)の作者である。お客様の乗り心地を良く運転しますよ〜雑だけど!

 レントゲン結果として、足は折れてないが恥骨が左右非対称であやしいとのこと

 一ヶ月入院もできるがそこの病院ではコロナ患者の方を請け負っているしお年寄りの長期の入院は痴呆になる可能性もとかとか。なるほどね、まあ家で待機アンド適度に身体を動かすことに。再来週また伺うことになる。

 正直折れてるんだろうな〜と思ってた。よくはないが一応のゴールのようなものが見えた気がする。

 母「意外と簡単ね」

 ってオメーが言うなよ〜! 散々事実突きつけられるの嫌がってたくせに!

「だったらやっぱり休んでたら治ってたじゃん」とでも言おうもんならひっぱたくとこでした(さすがに言わなかったけど)。

 怪我してる本人も辛いが、まわりだってヒヤヒヤなんであるよ。

 くたびれたまま遅刻して仕事。


 22日(火)

 松浦理英子さんの新作、長野まゆみさんのアンソロと連続できて、わたくしのなかの文学熱が燃え上がる! のだがじっくり読みたい二冊である。

 仕事のほうもとにかく処理ばかり言い渡されて、くたびれ果てている。来月の22日には存在しないのだ、と思うと悲しい。実際にそれによってだれている若手たちの姿を見るのも、悲しい。明日面接があるので、履歴書を書かねばならん。


 23日(水)

 喫茶店で恐ろしく久しぶりに履歴書を書く。三枚くらい書き直した。やっぱちゃんと見本のようなものをざっくり書いてから清書したほうがいいのだろう。いつだっていきあたりばったり! 人生そのもの。若い子はPCで作った、と言っていて、なるほど! そうすりゃよかった! 汚い字で書いた自分の履歴書のほうが読みにくいし人に読ませる意思なかろう。

 面談。

 本当に、なんだかこれまでと別物だな、という感じだった。


 24日(木)

 疲れ切ってしまったので、ゴミ出し間に合いませんでした。

 ぼんやりしすぎているのでスパ銭に。が、調子悪くなる。というか身体がもう「寝る」モードに。

 駅ビルをぼんやり歩いていて気づいた。服やら雑貨、いいなーと思って値札見て、「たかっ!」と思ったなら、それ別に自分にとっていらんものである。まあ生活レベルとか性格とかあるけど、だいたいが人生にとくに必要のないものである。雑誌で見て「素敵だな〜」くらいに留めておくもの、自分の金では買わなくていいもの。これは物自体がいい悪いでない。もうほとんど自分の感性とかセンスなので。

 値段見ても欲しいと思えるものは買ってよし。でもどうでもいいちまちましたものはあまり買わないほうがいい。便利そう、と実際便利って、意外と結びつかなかったりするし。

 戦争。


 25日(金)

 いろいろメールなど。銀行にいったりとか。

 近藤春菜さんと友近さんの扮する「徳男と徳子」が好きなのだが、念願のライブに。二時間観続けるのは、いまの状態では疲れるかも、とチケット買った時は良かったが行くととき足取り重かったわけだが、そんなことなかった。もっとほしかった。

 オチ、愛だなあ、と素直に感動した。年配のお客さんが多かったからだろうか、マイクに口を近づけて咀嚼音を聞かせて「ASMR」と春菜さん(徳男)が言ったとき、あんまり客席から笑いが起きなかったことにちょっと笑ってしまった。そりゃみんな知らないよな〜。

 帰って仕事、ノートにいろいろ整理した。


 26日(土)

 取材。山奥でスマホを忘れるという事態になり慌てふためくが、いろんな方の優しさのおかげでなんとかなった。本当にありがとうございます!!

 昼から森村泰昌さんの『人間浄瑠璃』を観る。森村さんのスタッフに知り合いがいて、面白いんでぜひ、とすすめられたので。

 絵の中の人物になっていたら、ついに人形にもなったか、と初めこの企画を聞いた時は思ったけど、それ以上に森村さんご自身の存在感というか、人形と比べたデカさ以上に圧倒させられるものがあった。

 終演後になにかと話題の中之島美術館のコレクション展をざっと観る。ほんの一部なんだろうけど、なかなかの充実ぶり、そしてなにを「どやっ!」っと見せたいかで、個性がでるなあ。ロートレックとかミュシャとかのあたりのエリアに気合を感じた、勝手に。

 となりの国際美術館の展示も見た。こちらもなかなか。ところでいつも僕は中之島の美術館の向かいにある定食屋で食べてるな。今日は刺身定食だった。そして前々から入ろう入ろうと思っていた「世界一暇なラーメン屋」に入った。いやひまじゃねーだろ、大人気だろ。チャーシュー追加しました。

 夜にスタッフの方と電話。とてもよかった、特に衣装が! と熱く語る。ぜひ再演をしてほしいし、東京でもやるべきでしょう。パンフレットの松岡正剛と森村さんの対談が面白すぎてじっくり読んだ。


 27日(日)

 この日記は、よっぽどなにも読むものがない、本屋に行くのも図書館にいくのもだるいし、ネットで検索して面白そうなものを探すこともかったるい、人向け、の日記である。いつも読んでくださっている皆さん向けであり、てきとうに見つけて適当に読んでくれたらそれだけで十分。そんなにライフハックも耳寄りな情報もない。ただただ都市部で働きながら小説を書いている男の日記(最近は介護も始めました)、である。オチもない。生活にオチはないから。人の生活、それこそかっちりとした素敵ライフでなく、道ですれ違ったあまり大したこともない気にもとめないやつがこんな生活していますよ、という報告で、たとえばいまやっているプロジェクト(西国三十三所とか)は別枠を取っているので、わざわざネットに放流するほどのものでもないことしか書かれていない。ほとんどの人が僕の小説なんて読んじゃいなかろう。ここから僕の小説に辿り着く人もいないわけではないかもしれないけど、まあそこまでは期待しないでおく。でも、後々読み返すと、自分的にはきっと思い出したら懐かしく思うことばかりが書かれている。そういう個人的なあれ。

 玄関の立て付けが悪く、うまく引くことができない、と家族に伝えたら「お前が壊した」と責められ、イライラする。うちの家族は基本的に優しさとかが欠けているし、粘着質気味なので、こういうことが起きるとえらいことになる。母と妹が散々僕のことをネタにしている現場に居合わせ超険悪なことに。いちおうは仲はいいのだけれど、こういう小さなことが毎日あるとストレスが溜まる。

 腹を立てながら本屋でパトリシア・ハイスミスの小説の書き方の本を買う。喫茶店で冒頭を読んでいたら、やっと気がおさまった。

 ドアの立て付けひとつでまるで世界の終わりのように大騒ぎ、そして徹底的に見て見ぬふりをして「お前がなんとかしろ」と背を向かれる。これはいまに始まったことではない。

 昔から何億回、この家族から離れようと思ったことか。そして、母に湿布を貼っているのだった。


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