第24回 目的と説明
発信器で居場所がバレてしまった叶羽。
レフィを連れられ再びYUSAに戻ってきた叶羽は副司令の椿楓に死ぬほど怒られた。
だが、叶羽は反論する。
なぜ敵は襲ってくるのか、自分の力は一体なんなのか、まともな説明をしないのに怒られる筋合いはない、と抗議したところに現れた日暮正継によって宥められた。
「もう隠せないだろうハルカゼ」
「でも……いいの?」
「…………真月君、大人として君に事実を全て話す。その覚悟はいいね?」
正継が叶羽に問う。
「一日、ください」
説明会は翌日に決まった。
◆◆◆◆◆
叶羽が助けてもらったフリーカメラマン天領銀河は途中までついて来ようとしたが、刀を持ったレフィがそれを阻止した。
「……ダメ」
「そっか、じゃあね真月ちゃん。また何か縁があれば会おう」
レフィの剣幕に押されることもなく銀河は最後まで笑顔を絶やさず帰っていった。
走り去るバイクを見送る叶羽は何処か寂しげだった。
「……叶羽、止めといた方がいい」
「な、なにをっ!?」
「なんでも」
いつも眠たげなレフィの目が鋭く怖い。
「あの人はたまたま助けてくれただけの人だよ!?」
「…………それでいい。叶羽には合わない」
何故、レフィが銀河を敵視しているのか叶羽にはわからなかった。
「年上かぁ……」
ゲームやアニメの中ではなく現実に自分が恋愛するなど意識したことが叶羽にはなかった。
一番身近な年上男性といえば自分の父だ。
(……ボクは何なの、お父さん)
引きこもりの中学生。
新人Vチューバー。
そして、もう一人の何者か自分の中に居ることを叶羽はまだ知らなかった。
◇◆◇◆◇
日本海の海底に蠢く巨大な影。
元は火星探査用に建造された巨大宇宙船パライソは深海を南に進路を取る。
「お集まりいただきありがとう。それでは今回の作戦会議を開始する」
巨大スクリーン前の壇上で挨拶する仮面の男、真道アーク。
五十名ほど人数が入れる、小規模の映画館のような広いブリーフィングルームにIDEALの主要メンバーから三人が集まった。
「……ディーティとルールーがやられたらしいな」
会議の開始、神父のような格好の大柄な男は開口一番、呟いた。
「減るの早すぎじゃなぁい? ウチラって四天王的なのじゃなかったけ? アークちゃん、大丈夫なのぉ?」
出口ドアに近い壁際の席に行儀悪く座っているのは、制服姿のギャル少女。
大きなキャラクター物のストラップがじゃらじゃら付いたスマホを片手に、ブラックコーヒーをストローで飲みながら真道に訊ねた。
「問題ない、それと正規メンバーはディーティにルールー。君ら、エイミィとシルバ。そしてコスモ含め五人だ」
「確かVチューバーの人だっけ? ほんっと顔見せないよねぇ。一回もあったことないし、ズルいよ一人だけ自由行動ぉ」
エイミィと呼ばれた少女は不満を漏らす。
「そういやアークちゃん、この間なんか爆発に巻き込まれたって聞いたけど大丈夫なん?」
「あぁ、新たな人員の大量確保もあって怪我もすぐ処置したから大丈夫。そして、この通りライヴシリーズ量産計画も彼らのお陰で順調だ」
スクリーンに船内カメラの様子が映し出される。
IDEALのロゴがついた制服を身に付ける者たちが無心になって作業を行っている。
「先週から64人増えた。これで乗組員は我々を入れて百人」
「いつの間に……時給いくらぁ?」
「このパライソを動かすのに人は沢山いる。沢山の志を同じくする者たちが各国から集まった」
「洗脳、の間違いじゃないのか?」
大柄神父シルバはアークを睨む。
だが、アークはやれやれ、といった態度で溜め息を吐いた。
「君たちは善意で私に協力してくれているのだろう?」
「うっそ? ウチら洗脳されてんの?」
「……お前の計画に賛同してる時点で洗脳されてるも同じことだな」
「はは、面白いこというねぇシルバのおじ様はぁ!?」
脳天に笑うエイミィはシルバに近付いて、広い肩をバシバシと叩く。
だが、シルバは特に反応せず無視した。
「政府が隠匿する月の遺跡に隠された古代文明。ライヴシリーズは古代人の残した遺産だ。それに選ばれた君たちは古代人の末裔と言ってもいい」
「じゃあライヴイヴィルとかいう黒いヤツはなんなん? あれも正規メンバーじゃないのぉ」
手を上げて質問するエイミィ。
「あれは廃れた神……だな」
「スタレタカミ?」
よくわからない真道の答えにエイミィは首を傾げる。
「いや……存在してはいけない、廃れさせなきゃいけない邪教の神」
「ふーん、神様ねぇ」
「ある男によって何処かに隠されていたのだが、ようやく見つけたんだよ。それがこの少女、真月叶羽」
画面に映された叶羽を見ながら仮面の奥でアークの顔が若干、引きつる。
先程は大丈夫と言ったが、本当はまだ火傷は完治しておらず、全身がヒリつき立っているのも辛いぐらいだったがIDEALの同志たちの前では平然に振る舞う。
「でもウチら世界をぶっ壊す力を持ってるのにぃ、なんで日本の町一つ、一体のロボットも落とせないとかチョーウケる、ウケない?」
「武力で世界を制圧するぐらいわけない。だが、我々の世界征服成就のためにはまず、ライヴイヴィルをなんとしても破壊しなければいけない。それは君たちにかかっている……」
深々と頭を下げる真道。
「でもぉ、ドーテーちゃんもルールーちゃんもやられちゃったんでしょう? 本当にウチラのロボットで勝てるのぉ?」
「やられたというのは語弊がある。ディーティもルールーも生きている。彼らのライヴシリーズは取り込まれただけだ……。そこで救出作戦なのだが」
「……俺が行こう」
ゆっくりとシルバが挙手する。
「俺の“ライヴロード”なら彼らを救い出せる」
「行ってくれるか、シルバ?」
「俺は世界征服などには興味はない……俺は俺のやりたいようになる」
ふてぶてしく言いながら、シルバは重い腰を上げると作戦会議室を後にする。
残されたエイミィはワクワクした表情で真道を見つめた。
「…………んで、ウチは?」
「君は最終兵器さ。もし彼が失敗するようなら君がサポートしてくれ」
「オケオケ、みなまで言わなくてもわかる。ドンと任せちゃってよアークちゃん!」
馬鹿に明るい声でエイミィは了解した。
そんな彼女を見て真道は口許だけで微笑んで見せた。
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