11、 45少年漂流記

 柳之介の単独反省会は続く。

 1年7組をメインキャラに据えたのはいいが、いまどき、ひとクラス45人は多すぎる、せいぜい40人なのでは。半世紀前の、自分の高校時代の標準をそのまま使ってしまった。不注意であるし、それ以前に、いつが舞台なのかも決めず何もかも曖昧なままでスタートしたのが間違いだったのだ。

 頭の中で、現在の話だということにし、読者もそう理解してくれるだろうと思っていたんだよなあ。「ほにゃららZ」は漫画もアニメも50年前に開始だから、あれそっくりのカラオケビルがあるってことは、やはり現在でないとヘンだ。当時はカラオケなんてものも存在せず、て、また昔話で時数を稼ごうとする己の根性が嫌だ。


 角田の特徴についても、なんも書いてなかったなあ。

 背は他界方で、スリムで、やさしそうな顔をしていた。あまり口をきいたことないし、クラス替えの後は交流もない、いまどうしてるのかなあ。

 クラス委員にした佐藤は、まじめとは言いにくいキャラだった。家が近いくせによく遅刻してきて、

「バス、遅れて」

 と、はっきりしない言い方をする。教師が、

「バスが遅れたのか、バスに贈れたのか?」

 と詰問して、やっと、

「バスに遅れました」

 て白状してたっけなあ。

 スペースバトルでは、内田をちょっと活躍させた程度で、クラス転移する意味があったのだろうか。まだクラス転移について、よくわかってないし。ガン転移なら、よく聞くんだけどね、還暦近くなってから、友人知人がガンにかかることが多くなって。


 いかんいかん、また脱線だ。

 こんなヨレヨレ状態でも、なんとか長編を書きたいのだ。

 柳之介は、今更ながらに公開している。

 ノリノリで書いた例のバトルで、クラスの面々を、それぞれ活躍させれば、3倍くらいに水増し、いや引き伸ばせたのになあ。

 アイデアが出ただけで嬉しがって、起きたことだけチャチャッと書きつらね、文字数を稼ぐことは二の次、そういうところが良くない、と気づく。まあ、文字数を稼ぐって言い方もアレだけど。内容をふくらます、ていねいな表現を心掛ける。

「ていねいに、しっかりと、聞く耳を持ち、私自身の言葉で伝えていきたい」

 なーんて、某総理の言い方とそっくり、かも。

 本当、どなたかいいアイデア、ありまへんか?

 困った時だけの他力本願、神頼みだってしちゃう。

 悪魔に魂を売ってもいい、怨念神社にだってお参りする!


 いかんいかん、また錯乱してしまった。

 原点に帰ろう。

 もちろん大長編を書きたいのだが、長ければそれでいいのか。

 無内容でもいいのか。

 単に文字数が多いだけなら、マジ、

「猫田」

「はい」

「野上」

「はい」

 と、点呼の様子をチンタラと書き続けていけば、いつかは10万字に達するだろう。

 だから、それじゃ自己満足なんだってば。このネタ、前にも使ってるし。

 アカン、言うとるやろ。逃げたらあかん、あかんのじゃあ!

 ジャンルは未定でいいとして、「銀河」は群像劇なのか。それは確かな気がする。

 こんな時は、過去の名作に学ぶのが近道だな。

 群像劇で有名なのは?


「15少年漂流記」というものがあったな、タイトルしか知らないが、1年7組の三分の一の数の少年たちが漂流する話だろう。

 あらすじを調べると、無人島に流れ着いたのは確かだが、船には設備も食料もそこそこあり、あまり興味をひかれなかった。あらすじの途中で飽きてしまった。年齢も13歳くらいだし、参考にならんわ。

「漂流」がつく話が、別にあったような。そうだ、楳図かずお大先生の「漂流教室」があるではないか。

 クラス転移というより学校転移だ。

 あらすじを読んでみて、柳之介は、感激にふるえた。

 未来の荒れ地に転移してしまった小学生たちが逞しく明日を切り開いていく。けしてハッピーエンドではないが、言い知れぬ希望を感じさせる。これが半世紀前の作品とは、感嘆するしかない。

 念のため「クラス転移」について調べてみた、つーか、「カケヨメ」内で、その言葉で検索したら、いっぱい出てきた。なんかスキルを身に付けるとかゲットするとかして、異世界で活動するのだろうか。よくわからんし、自分が書けるとも思えない。


 ジャンルって、そんなに大事か?

 柳之介は、だんだん、どうでもよくなってきた。

 ジャンル関係なし、

 オールジャンル小説、というものがあってもいいのでは?

 45人があちこちに団体でワープしては事件に遭遇、のパターンでは、ちょっとなあ。

 とりあえず、何か書かないと。

 うだうだ悩んでいても仕方がない、何らかのジャンルの話を書かないと、何も書けなかった頃に逆戻り、あんまこだわると前に進めないのだ。

 こうなったら得意の他力本願だ、超時空妖怪だって夢のお告げだし?

 西郷艦長は、あみだくじでオソロシヤ軍と戦うはめになった。

 縁起でもない、あみだくじは避けよう。

 色んなジャンルを小さな紙に書いたのをティッシュの空き箱に入れ、適当に引き抜く。

 柳之介は、ため息をついた。

「歴史」と書いてあった。

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