5,マサカの真実

「変身!」

 西郷の声に、ミサカを中心に6隻が合体。頭と胴はミサカ、右脚はゴサカとムサカ,、左脚がナナサカ、ヤサカで左腕がクサカだ。

 右腕になるはずだったシサカは、宇宙の藻屑と消えた。その無念さも手伝い、ミサカの形相は心臓が弱い者はショック死しそうな恐ろしさ、並みの神経でも一生トラウマになりそうだ。


「超時空妖怪マサカス、見参!」


 恨みに満ちた地鳴りのような声がオソロシヤ軍全員の体に響き渡る。

「モスコー」の艦長ゴロツキーは、かつて味わったことのない恐怖に総毛立った。

 6隻の凄まじい負のエネルギーが左腕のクサカに集結し、無限の妖気が拳に充満する。


「コズミック怨念パーンチ!」


「モスコー」のど真ん中を怒りの鉄拳が突き抜け、大爆発を起こす。

 そばにいたオソロシヤ戦艦、戦闘機は巻き込まれて誘爆、火だるまになった。無事だったものも震えあがり全速力で逃げていく。


 ありがとう四ツ谷、おかげで勝てたぞ。

 荒い息を吐きながら、九里は亡き友に報告する。

 坂、坂、坂、失地しち坂、坂、坂。

 それが各艦の正式名称である。

 不吉な名を押し付けられ、「縁起でもない坂艦隊」と陰口を叩かれたが無理もない、ミサカでさえ、正式には坂。「魑魅魍魎ちみもうりょう」の「魅」だ。

 上官にへつらう者が多い中、西郷は、はっきり物を言う実直さが嫌われ、辺境警備に追いやられた。与えられた艦船は旧式で、他の艦も大した戦力にはならない。クルーも落ちこぼれの烙印を押された者ばかり。彼らの鬱屈も限界にまで達していた。

 西郷は、自分が率いるミサカ艦隊を、誇りをもって「魔坂まさか艦隊」と呼んでいる。


 喜びに沸く艦内。

「やったぜ!」

「イエーイ」

 生徒たちがハイタッチを繰り返す。

 その様子をほほえましく眺めながら、西郷は、

「さあ地球に帰ろう」

 静かに言い、やさしい目で総員を見回した。

「呪怨神社に戦勝報告をせねばな」

 奇妙な名前だが、魔坂艦隊の守護神社なのだ。

 呪怨神社?

 生徒のひとり角田右京は、聞き逃さなかった。

 どんな神社なんだろう、行ってみたいな。



 柳之介は、はっと目覚めた。

 またもや昼食を食べすぎて昼寝、2時間も寝てしまった。

 おかしな夢を見たものだ。

 日露戦争のバルチック艦隊との戦い、戦艦三笠を三坂に変えて書いてみよう、と思った以降の記憶がない。

「ワ--プ」

 なんて叫んだのがいけなかったのだろうか。

 ま、いっか。

 自力では考え付けない話を夢で見て、なんか得した気分だ。

 忘れないうちに書いてしまおう。

 柳之介は起き上がり、PCに向かった。


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